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2007/06/05(Tue) 20:07:32
その日。 私立クリスティ学園の門を、潤んだ瞳で見つめる少女がいた。 「来た・・・やっと来れた」 両手を組み合わせ、真新しい制服に身を包んだ彼女は、祈るようにあこがれの校舎をみつめる。 「君、新入生かい?」 門の内側から、警備員の声がする。 「まだ登校時間じゃないよ。6時じゃないか」 わかってます、と少女はつぶやき、うつむいた。 「でも来たかったんです。早くここに」 動かない彼女を不思議そうに見つめながら、警備員は戻っていった。 少女は、うっとりと門の中を見る。 (大きな桜の木。やっぱり手紙の通りね) 桜の巨木が門のすぐ横にそびえ、白い花びらを散らしている。 まだ朝方の薄もやの中、少女は感激に浸りながら いつまでもそこに佇んでいた。
くすくすくす・・・。 小さな笑い声がして、彼女は我にかえる。 門の外側まで張り出した桜の大枝に、誰かがもたれて座っていた。 白い花に包まれて、彼は微笑む。 少女はしばらく見とれていたが、やがて頬を赤くした。 こんな時間に、ここに立って、一人の世界に浸っていたのだ。 さぞかし変人と思われただろう。 「ねえ、君。どうしてここに来たの?」 「え?」 「だって、とても嬉しそうじゃない。そんなにここに来たかったの?」 大人びた少年は、綺麗な笑みを浮かべた。 少女はうなずき、答える。 「わたしの初恋の人が、ここにいるんです」 「そう。会いに来たんだ」 彼は、ふわっと体を動かした。 (え!?) 次の瞬間。 彼は高い木の枝から自然に降りると、少女の前に立っていた。 黒髪に縁取られた綺麗な笑顔に、少女の心臓はどきどきする。 彼は、長い指を彼女のあごにかけ、上向かせた。 瞳を合わせ、やさしく微笑む。 「会えるといいね。その人に」 「・・・・・・」 にこっとすると、彼は少女の横を通り過ぎる。 肩と肩がぶつかった。 「あ・・・」 彼女は振りかえる。 (嘘・・・いない!) 数秒前、通り過ぎた少年は、影も形もなくなっていた。 (わたしの見間違い? 夢・・・だったのかな) いつまでも少女は、彼が行ってしまった方を、不思議そうに見つめていた。
第一巻<序> / TB(-) / CM(-) / ↑
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