きつねこぶたの創作部屋

きつねこぶたの創作小説ブログです。ただいま<私立クリスティ 学園シリーズ>を連載しています。
[ <2>−1 ]
2007/07/07(Sat) 11:04:07
 茉理が学園に入ってから、一週間が過ぎた。
 キーンコーンカーンコーン。
「終わったあ」
「昼だ、昼」
 チャイムの音と共に、皆、騒がしくなる。
「茉理っ、おべんと食べよ」
 奈々が、弁当箱を提げて、やってくる。
 茉理はうなずくと、かばんから昼食を引っ張り出した。
 奈々とはすっかり仲良くなって、休み時間もいつも一緒。
 お互い、苗字じゃなくて、名前で呼び合う仲になっていた。
「あれ? 祥子じゃん?」
 廊下を歩きながら、奈々が声をあげる。
 目の前の、小柄な後姿に向かって、奈々は突進していった。
「しょうこ、久しぶりっ」
 振り向いた祥子は、嬉しそうに奈々に飛びついた。
「奈々っ、会いたかったわ」
 二人はきゃっきゃっと笑いながら、再開を喜び合っている。
(ちょっと、うらやましいかも)
 二人を見ながら、茉理は思った。



第一巻<2> / TB(-) / CM(-) /

[ <2>−2 ]
2007/07/07(Sat) 11:05:37
 このクリスティ学園は、小・中・高・大学・大学院までストレートの一貫教育。
 小学校の時に入学して、そのまま上がっていくから、どうしても同じ学年の子たちとは、顔見知りになっていくのだ。
 クラスは5つ、A〜Eまで。
 毎年クラス替えはあるのだから、6年も一緒にいれば、おのずと顔見知りになるのもうなずける。
 一クラス、20人前後が基準なのにも驚いた。
 前、行ってた小学校は、30〜40人くらいはいたのだから。
(私立だからかな?)
 最初はなんとなく、いつもより教室が広々と感じたが、一週間もたてば慣れてきた。
 でもちょっとしたこと---廊下で出会って挨拶する知り合いが、そんなにいない、とか---があると、途中入学してきた自分が、ちょっぴり淋しくなってしまう。
(めげないめげない! ここには、お兄ちゃんがいるんだもん)
 自分を励ましつつ、茉理は二人の方に近付いていった。



第一巻<2> / TB(-) / CM(-) /

[ <2>−3 ]
2007/07/07(Sat) 11:06:55
「でねー、うちの担任、すっごくうるさくてさ」
 3人は屋上で、お弁当を広げていた。
 ここが一番気持ちいいよ、と教えてくれたのは奈々で、それから茉理たちのランチ・タイムは、毎日屋上になっている。
 今日は祥子も一緒で、奈々ははしゃいでいた。
 6年生のとき、クラスが一緒で、仲良しだったんだと、紹介しながら茉理に教えてくれた。
 茉理も紹介されたが---当然、驚いた顔で名前を聞き返され、そのあとには笑われて、茉理はため息をつきながら、お弁当をつっついた。
 知り合いが出来るのは嬉しいが、毎回こうだから嫌になる。
 祥子は、奈々と同じく、明るくて、やさしそうな女の子だった。
 ただ奈々がはつらつとして、元気そうなのに比べ、少々おとなしめで、女の子らしい雰囲気を持っている。
「そういえば、もう聞いた?」
 祥子が、声を低めてささやいた。
「E組の遠野君、もう生徒会から、お声がかかったんですって」
「やっぱりね」
 奈々はうなずく。


第一巻<2> / TB(-) / CM(-) /

[ <2>−4 ]
2007/07/07(Sat) 11:08:06
「生徒会?」
 首をかしげる茉理に、祥子が説明してくれた。
「ほら、ここの生徒会。名門魔族クリスティ家の方たちが、されてるでしょ? 遠野君は、クリスティの一族だから、すぐにもお呼びがかかるのよ」
「は?」
 茉理の箸が、一瞬止まった。
 今、何て言ったの? 魔族? クリスティ?
「ごめん。さっぱりわからない」
 困った顔の茉理に、奈々は笑った。
「まだ入ったばかりだから、戸惑うのも無理ないわよね。そのうち慣れるって」
「そうよ。だって、最近来たってことは、ようやく自分が魔族の子孫だったってことに気付いたんでしょ? この学校、先祖が魔族しか受け付けないものね」
 祥子のやさしい声に、茉理はガタッと箸を落とした。
「何それっ、魔族って、何のこと?」
「知らないの?」
 二人は、目をまん丸にして、茉理にせまる。
「知らないっ、そもそも何の冗談? 魔族なんて、お話とか、マンガに出てくる架空の存在で、ほんとの世界にいるわけないじゃん!」


第一巻<2> / TB(-) / CM(-) /

[ <2>−5 ]
2007/07/07(Sat) 11:08:53
 茉理の叫びが、ショックだったらしい。
 二人は顔を見合わせ、どうしてよいかわからない、という表情を浮かべた。
「祥子、どうする?」
「先生に話した方がいいわね。知らないってのはいけないわ」
「まさか本当に魔族じゃない、普通の人だったりして」
「学校の方針、変えたのかしらね」
 憂い顔の二人を見ながら、茉理は完全にパニックに陥っていた。
 何なの? この学校・・・。
 悪い冗談かと思ったが、どうにも二人は真剣そのものだ。
 先生に話す、話さないでもめてるし。
(わたし---もしかして、とんでもないとこに来ちゃったのかな。助けて、お兄ちゃん)
 心の中で、あこがれの人にS・O・Sを叫びながら、茉理のランチ・タイムは過ぎていった。


第一巻<2> / TB(-) / CM(-) /



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