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2007/07/07(Sat) 11:12:38
二人から、魔族うんぬんの説明を聞いて、3日がたった。 (別に普通じゃない) 今日も登校しながら、茉理は肩をすくめる。 最初は驚き、途方にくれ、これから自分はどうなるのかと、緊張して寝付けなかったが。 その後、特に変わったことは起こらなかった。 普通の授業、普通の先生、普通の生徒たち。 どこをどう探っても、魔法という言葉にそぐわない、まったく現実的な日常だった。 短気な数学の教師によるチョーク飛ばしも、ちゃんと指をつかってやってるし。 水道の蛇口がはずれ、大量の水が吹き出てきても、別に故障してただけだったりして。 茉理は最新の注意を払い、魔族だというクラスメイトや学校の中に気をつけていた。 でも予想に反し、何もなかったので、かえって開き直ってしまった。 (もういいや。なんか普通だし) 二人が真剣に言うとおり、人は不思議な力があるのかもしれない。 でも別に、日常に現れなければ、どうってことないものだ。 (気にすることないよ。普通、普通) 茉理は、魔族のことは、頭の片隅にしまいこみ、まあ、そういう話もあるかもね、ぐらいの認識に留めておいた。 緊張も徐々にほぐれ、校内も少しずつわかるようになってきた。 それに----。
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2007/07/07(Sat) 11:13:29
(わたしには、もっと考えないといけないことがあるじゃない) 休み時間、茉理は校舎をうろついた。 特に2年生の教室がある階は、毎日行ってみた。 (・・・お兄ちゃん) 時々、それらしい男子先輩にすれ違うこともある。 でもさりげなく名札を見ると、名前が違った。 4月の終わり頃には、茉理はぐったりしていた。 いくら探しても、初恋の人はいない。 影も形もなかった。 (お兄ちゃん---どうして?) 放課後、こっそり2年生の教室に忍び込み、壁に貼ってある当番表や名前の書いてありそうなものを探してみたりした。 でも水沢 明人の名前は、どこにもなかった。
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2007/07/07(Sat) 11:14:33
「ねえ、茉理。今日はバスケ部、行ってみない?」 授業終了のチャイムのあと、奈々が誘ってくれた。 「まだ部活、決まってないんでしょ? 行こうよ」 「え・・・うん」 茉理は、よいしょっとかばんを持つと、立ち上がった。 もうすぐ5月になろうというのに、茉理はまだクラブを決めていなかった。 もちろん強制ではないのだが、たいていの子はクラブ活動をしている。 体育館に連れ立っていくと、彼女たちの他にも見学者がいた。 「きゃーっ、雅人様よ」 「かっこいい、雅人様―、がんばって」 女生徒たちが固まって、男子バスケ部の練習試合を見ている。 「随分にぎやかね」 きょろきょろする茉理とは反対に、奈々はテンションがあがっていた。 「やだ、ついてるー。今日は雅人様が出られてるのね。やったあ」 彼女はすぐに集団に突進していき、前列に割り込み、目をハートにしながら、黄色い声をあげた。 「雅人様っ、がんばってーっ」 出遅れた茉理は、集団の後ろで途方にくれてしまう。 (何? そんなに人気がある人がいるんだ)
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2007/07/07(Sat) 11:15:32
ためいきをつき、彼女は男子バスケ部から目を離した。 (えーと、女子バスケ部は・・・と) でも、どこにも女子バスケ部の姿はない。 (おかしいな、今日、クラブ、休みなのかな) 首をかしげながら、彼女は体育館に入ってきた体操服の女子に聞いた。 「あの、すみません、女子バスケ部はどこですか?」 「女バス? なら、そこにいるじゃない」 体操服の女子は、男子バスケに声援を張り上げてる集団の中から、体操服を着ている生徒たちを指差した。 「今日は雅人様が出られてるから、みんなクラブどころじゃないわよ」 そう言って、行こうとした彼女を、茉理は引き止めた。 「あの、その、雅人様って、誰ですか?」 体操服の女子は、目をまん丸にして、茉理をまじまじと見た。 「あんた、1年? 雅人様を知らないの!?」 「はい。わたし、転校生なんです」 「伊集院 雅人様。中等部生徒会副会長にして、学園の理事を務める伊集院家の一員よ」 なにやらすごい肩書きを並べられ、茉理は一瞬混乱した。 じゃ、わたしも行くから、と体操服の女子は、さっと取り巻き応援の中に入っていく。
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2007/07/07(Sat) 11:19:03
「伊集院 雅人って・・・」 茉理のつぶやきに、後ろから軽く笑う声がした。 「へえ、この学校に、僕のことを知らないレディがいるなんて光栄だね」 彼女は、驚いて振り向く。 そこには、学生とは言いがたい派手な容貌の男子がいた。 髪は赤ががった金髪で、瞳は緑。 驚くほど彫りの深い端整な顔は、長い髪で縁取られ、ぱっと人を引き付けずにはおかない---まるで芸能人か何かのような---雰囲気を漂わせていた。 (うっわーっ、派手な先輩) 茉理は、心の中で見とれてしまう。 (あの髪、染めてるのかなあ。よくやるわね) けっこうクリスティ学園は風紀に厳しい。 なのに堂々とキンキラ頭でいるなんて、相当勇気のいることだ。 立ち居振る舞いも、どこかの王族を思わせる優雅な動きで、立ってるだけで絵になる、とはまさにこのことだろう。
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