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2007/07/07(Sat) 11:27:15
(なんだったんだろう・・・) 茉理は、折れた花を手に、校門のところにたたずんでいた。 『雅人様』にあこがれて、バスケ部入部を即座に決めた奈々は、入部届け出してくるね、と早速部室に行ってしまった。 彼女を待っているのだが、なかなか帰ってこない。 頭に浮かぶのは、先ほどの『雅人様』。 (本当に変なの。雅人様って、双子なのかな?) バラの花を、そっと花壇の隅に置き、茉理は首をかしげた。 いつまで待っても奈々は来ず、下校をうながす放送が、学園内に響き渡る。 生徒たちの数もまばらになり、空はどんどん薄紫に染まっていった。 (奈々、遅いな) 所在投げに桜の大木にもたれて、茉理はためいきをつく。 肌寒い夕風が、三つあみを揺らして吹き抜ける。 こんな時間は、なんとなく物寂しくなるものだ。 静まり返った校舎を見ながら、茉理は不安にかられていった。 (お兄ちゃん・・・) 学校に入って、数週間。 でもまだ水沢 明人の消息はしれなかった。
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2007/07/07(Sat) 11:28:08
茉理はポケットから、白い封筒を取り出す。 その古い手紙は、数年前、明人からもらったものだった。
『茉理ちゃん 元気にしてる? 僕は、とても元気です。 新しい学校にも慣れました。 新しいお父さんと、妹も出来て、とても楽しいです。 今度の学校は、クリスティ学園といいます。 学校には門のところに、大きな桜の木があるんだけど、とっても不思議な言い伝えがあるんだって。 それは、この次、手紙に書くね。 それではこれで終わります。 バイバイ。 明人より』
日付は3年前になっていた。 明人から来た手紙は、この一通きり。 でも絶対、忘れてたりなんかしない---茉理は、そう信じていた。 (お兄ちゃんが、わたしを忘れるなんてこと、絶対ないんだから)
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2007/07/07(Sat) 11:29:04
校舎を見ると、シーンとして不気味なほどだ。 昼間の喧騒が嘘のようで、茉理は思わずぶるっと震えた。 (なんか、怖い・・・) こないだ聞いた魔族の話が、彼女の脳裏に浮かんでくる。 思い返せば、あの『雅人様』も気味悪く思えて、茉理は、ぞっとした。 (やっぱり、この学校、何か変だよ) 校舎がせまってくるような気がして、彼女はその場にしゃがみこんだ。 (奈々! 早く来てよ!) そんな茉理の頭に、フワリと木の葉が落ちてくる。 「え?」 茉理は顔をあげ、頭についた桜の葉を手にとった。 そして上を見る。 「あ・・・」 彼女は、目を大きく見開く。 (あの時の人だ) 最初に学園に来たとき会った、あの男子生徒が、じっと茉理を木の上から見下ろしていた。
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2007/07/07(Sat) 11:29:50
「どうしたの?」 穏やかな笑みを浮かべて、彼は聞く。 「どうしてそんなに悲しそうなの?」 「・・・・・・」 「探してる人には会えた?」 茉理はうつむいて、首を横に振った。 「そう」 考え込むように、彼は空を仰いでいたが---。 すっと、また茉理の前に下りてきた。 やさしい黒い瞳で、彼女をみつめる。 茉理は、胸がどきどきした。 (こらっ、落ち着け、心臓!) こんな風に、男の子に間近で見つめられることなんて、初めてだ。 心配そうに揺らめく表情が、彼女の心をきゅんとさせる。 (どうしたんだろ、わたし) 自分でも制御出来ない心の反応に、茉理はどうしてよいかわからなかった。
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2007/07/07(Sat) 11:30:47
彼は、黒髪をかきあげると、A4サイズの小型小冊子を彼女に差し出す。 「良かったら、使って」 「え?」 「それ、本当は外部持ち出し禁止なんだ。だから終わったら、僕に返してほしい」 「あ・・・はい」 「約束だよ」 彼は、にこっと笑うと、茉理の横をすり抜ける。 「がんばって、きっと見つかるよ」 そっと耳元に言葉を落とし、また去っていった。 「あのっ、名前を---」 聞かなきゃ、と思って振り向くと、また彼の姿は消えていた。 (不思議な人・・・) でも嫌な感じは、まったくない。 むしろ、もっと会いたかったりして---。 呆けていた茉理は、はっと我に返り、小冊子を見た。 (これ、なんだろ) 開いてみると、なんと全校生徒の名簿だった。 裏には、『中等部生徒会』と書かれてある。 (生徒会---ってことは、あの人も生徒会役員なのかな) 茉理は、小冊子を胸に抱きしめ、彼が消えて言ったほうに向かって、軽く頭を下げた。 (ありがとうございます。必ず返しに行きますね)
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