きつねこぶたの創作部屋

きつねこぶたの創作小説ブログです。ただいま<私立クリスティ 学園シリーズ>を連載しています。
[ <6>−1 ]
2007/07/16(Mon) 14:39:35
 教室に戻ってきた茉理を待っていたのは、クラスメイトたちの冷たい目線だった。
「すみません、遅くなりました」
 保健室で手当てを受けていたら、授業は始まってしまっていた。
「遅刻は許さん! 廊下に立ってろ!」
 苦手な数学の教師の大声が、教室中に響き渡る。
「え? あの、わたし、保健室に言ってて」
「言い訳はするな! さっさと教室から出て行け」
 山田先生は、思いっきりチョークを投げつけてきた。
「あたっ」
 茉理の頬に正確に当たり、彼女は頬を押さえる。
(もう! 理由ぐらい聞きなさいよ、この暴力教師)
 心の中でそう叫び、救いを求めるように奈々を見た。
 でも。
 仲良しの友達は、あわてて目をそらし、この状況を無視し続けたのだ。
 茉理は、ためいきをつき、廊下に出る。
 さっきの帝会長の攻撃で、かなり体も痛んでるのに、チョークまで投げられ、教室にも入れず、精神的にショックが大きかった。
 また涙が出てくる。
(やだな・・・こんなかっこじゃ、お兄ちゃんに会いにいけないや)
 あとからあとからあふれる涙を、袖でこすると、彼女は辛抱強く廊下に立っていた。



第一巻<6> / TB(-) / CM(-) /

[ <6>−2 ]
2007/07/17(Tue) 15:36:46
 昼休みになった。
「奈々、おべんと、食べよう」
 いつもは彼女の方から声をかけてくれるのに、何故か今日は寄ってこない。
 茉理は、弁当箱を持って、奈々の方に行った。
 彼女は一瞬ぎくっとしたが、表情を変えて、茉理に叫んだ。
「こ、来ないでよっ。あんたとは、もう友達じゃないわ!」
「え・・・奈々?」
「生徒会の帝様に、あんなことするなんて許せない! あんたなんか大っ嫌いよ。もう声かけてこないで」
 彼女はそう怒鳴ると、弁当箱を抱えて、教室を走り去ってしまった。
(何よ、それ)
 茉理は、あっけに取られたが、徐々に怒りがこみ上げる。
(黒板消しを落としたの、奈々じゃない。どうしてわたしを責めるのよ!)
やり場のない怒りを抱え、彼女は身を震わせた。



第一巻<6> / TB(-) / CM(-) /

[ <6>−3 ]
2007/07/18(Wed) 05:22:29
「ここにいたね」
 校庭の隅にある木々の中に、雅人は探し人を見つけて声をかけた。
「やあ」
 小さな小型PC(ボケットに入るぐらいのサイズ)を打ちながら、探し人は答える。
 木の幹にもたれながら、雅人は、座ってPCに集中している彼を見下ろした。
「おもしろいこと、見つけたんでね。君にも教えとこうと思って。直樹君」
「結構だ。こっちは今、忙しいんでね」
 PCを打つ手は、止まらなかった。雅人は大仰にためいきをつき、バラの花片手に悲しそうな表情になる。
「親友の僕を無視するつもりかい? なんてつれない人なんだ!」
「いつから親友になったか知らないけど、もうお前の全国女生徒追っかけファンの話は結構。さっさと帰ってくれ」
 黒い眼鏡を直しながら、直樹はPCに神経を集中する。
 雅人は、ついっと腕を伸ばし、優雅なしぐさで、PCの蓋を閉めた。
「おいっ、何するんだ!」
「まあまあ、聞いておいて損はないよ」
 にこにこしながらも、笑っていない瞳に、直樹は肩を落としてつぶやいた。
「なんだ?」
「こ・れ」
 彼は、脇にかかえた小冊子を出す。
 直樹の眉毛が、数ミリあがった。
「これがどうかしたか?」
 無くなった、と騒いでたのに、お前が持ってたのか、とぶつぶつ言う彼に、雅人は小冊子を渡した。


第一巻<6> / TB(-) / CM(-) /

[ <6>−4 ]
2007/07/19(Thu) 06:01:16
「どこにあったと思う?」
「お前が持ちだしたんじゃないのか?」
「残念でした。僕じゃないよ」
 優雅に微笑み、雅人は薔薇で、名簿を指す。
「あの子が持ってたんだ」
「あの子?」
「ほら、今朝、帝の頭に黒板消しを落とした少女だよ。名前は」
 言いかけて、彼はぷっと吹き出した。
「・・・なんだよ」
 突然笑われ、直樹は不機嫌そうに顔をしかめる。
「あとのまつり、だって。ふふっ、面白いネーミングだと思わないかい?」
「冗談に付き合ってる暇はないんだが」
「今の君の言葉、あのレディが聞いたら、さぞご機嫌ななめになるだろうね。いや、本名だってさ」
「で、彼女がこれを?」
 雅人はうなずく。
 直樹は、黙って考え込んだ。



第一巻<6> / TB(-) / CM(-) /

[ <6>−5 ]
2007/07/20(Fri) 08:51:15
「おもしろいと思わないかい? 魔力を持たない普通の少女が、我が生徒会室に厳重保管されてる重要機密を手にするなんて」
「確かに」
「しかも彼女、なんて言ったと思う? この名簿、帝に貸してもらったそうだよ」
「何?」
 直樹は、驚きで立ち上がった。
「帝!? あいつにか?」
「そう。なんでも『天使』のような帝だったそうだよ」
 薔薇の花をくるくる回しながら、雅人はくすくす笑った。
「お前な」
 直樹は、ためいきをついて座り直す。
 最初の驚きは消え、彼はまたPCの蓋を開けた。
「話はそれだけか?」
「そう。じゃ、よろしく」
 雅人はそう言うと、直樹の肩にぽん、と手を置き、すっと消えた。
 残された直樹は、ふう、と息を吐く。
 忙しくなりそうだ。
 彼は、PCに文字を入力した。
『後野 茉理』
(よろしく、か。まったく雅人のやつ)
 苦笑しながら、PCの検索を押す。
 少しでも情報を集めねば。
 そのために、彼が自分に会いにきたのだから。
 直樹はさっきよりも真剣に、PCに向かっていた。


第一巻<6> / TB(-) / CM(-) /



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