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2007/08/05(Sun) 16:07:48
「やあ」 ゴールデンウイーク明けの昼休み。 中等部特館の最上部---早い話が屋根の上で、小さな密会が持たれていた。 「僕をこんな所に呼び出すなんて、直樹君、君はなんて罪な人なんだ。君の秘めたる熱い想いを受け止めるには、まだ僕は、心の準備が出来ていないというのに」 「お前は今度、魔法薬入りの紅茶を進呈した方がよさそうだな」 メガネを指で上げながら、暗い声で直樹が脅す。 「君も帝と同じで冗談がわからない男だね」 やれやれ、がっかりした表情の雅人に、直樹は憮然とした顔で言った。 「お前と違って俺は忙しい。用件は手短に言う」 「はいはい」 つれないの、と口を尖らせる雅人を無視し、直樹は続けた。 「後野 茉理の件。調査してみた結果、彼女は白と判明した」 雅人の瞳が、きらりと輝く。 「それは確かなわけ?」 「ああ、50代にわたって先祖を探ってみたが、まったくの白。魔族の係累と血筋が交わった形跡はなし」 「なんだ、それ」 怪訝そうな雅人に、直樹もうなずいてみせた。 「ああ、おかしいほどだろう?」 「そこまでまったく魔族のご先祖がいないってのも、めずらしいね」 普通、どこかで一人や二人は、知らずに魔族係累の先祖と交わっているはずなのだが、彼女はまったくその気配がないのだ。
第一巻<8> / TB(-) / CM(-) / ↑
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2007/08/06(Mon) 07:37:48
「故意、かな」 「かもしれん。あるいはまったくの偶然かも」 直樹は、むずかしい顔をする。 「とにかく今の段階では、彼女は魔力のかけらも持たず、魔族となんのかかわりも持たない少女ということだ」 「ふーん」 つまらなそうに薔薇を弄ぶ雅人を見やり、直樹は立ち上がる。 「以上。俺は行くよ」 彼は、すっと屋根から飛び降りた。 「はーい、ごきげんよう」 ひらひら〜とポケットから白ハンカチを出し、当たり前のように雅人は振ってやる。 誰もいなくなった屋根の上、久しぶりに真剣な顔で、彼は薔薇の花を空にかざした。 「後野 茉理・・・か」 おもしろくなってきた。 彼の中の何かが、高揚して止まらない。 いつのまにか、彼の持つ赤い薔薇が、その色のごとく煙を上げて燃え上がっていた。
第一巻<8> / TB(-) / CM(-) / ↑
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2007/08/07(Tue) 22:50:52
キーンコーンカーンコーン。 昼休みの終わりを告げるチャイムが、校舎中に響き渡った。 (あーあ) 今日も、ぼろぼろになった制服を、茉理は恨めしそうに見る。 午前中に受けた魔法攻撃で、もう彼女は頭の先から足の先までぐしょぐしょのよれよれだった。 1時間目、数学。 当てられた問題が解けなくて困っている彼女の頭に、突然水の入ったバケツが現れた。 バケツは、すかさず大量の水を彼女に浴びせる。 クラスメイトの嘲笑を浴びながら、彼女はまたも叱られて、廊下に立たねばならなかった。 (もう! 先生も先生よ! わたしが水を出したんじゃないことぐらい、わかるでしょうに!) どこの馬鹿が、問題が出来ないからって、自分で水をかぶるなんていたずらをするかっていうのよ! まったく理解しない教師にも腹が立つ。 2時間目は英語の小テスト。答案を書こうとすると、シャーペンが消えてしまう。 「あ、あれ?」 あわててかわりを出そうと筆箱を覗くと、中身がごっそり消えていた。 (なんで? どうして!?) 誰かが貸してくれるはずもなく、茉理は答案を白紙で出さねばならず---やっぱり教師に見咎められ、休み時間呼び出しをくらって、こってりとしぼられた。 いくら説明しても、わかってもらえない。
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2007/08/08(Wed) 09:18:11
ふてくされながら、受けた3時間目は体育。 今日は球技でバスケだったが、茉理がシュートしようとすると、ボールが必ず教師の頭目がけて正確に飛んでいく。 「すみません!」 最初は気をつけろ、ぐらいだったが、毎回そうなので、ついに教師に頬を叩かれた。 「なんだ、お前は! うらみでもあるのか!」 かんかんになった体育教師によって、放課後体育館の掃除を言いつけられる。 ぐったりしながらの4時間目は、さすがに静かになったと思ったらとんでもない。 今度は古典だったが、突然茉理のカバンから、弁当箱が飛び出したのだ。 ガシャーン。 派手な音を立て、床にころがる弁当箱に、教師の目が注がれる。 茉理も、あわてふためいた。 (なんでわたしのお弁当があっ!) これでお昼が台無し---ってか、それどころじゃない! 今度は、早弁をしていたとあらぬ疑いをかけられ、教室の後ろに立たされた。 それも両手に水入りバケツのおまけつき。 (今時、こんなんで後ろに立たすなんて) はあっとためいきをつきつつ、腕の重みに閉口していると---。 突然バケツが動きだし、またまた彼女の両側から水を浴びせてきた。 (もういやっ) 茉理はうんざりしながら、びしょぬれになったおぞましい自分の姿を見た。 ここ数日毎日のことなので、体操服から制服も、スペアを何枚か持ってきてはいるが、さすがに今度ばかりは着替えがなかった。
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2007/08/09(Thu) 10:58:03
昼休みは、日当たりの良い屋上にて服を乾かしたが、今度は体が宙に浮く。 「な・・・なんなの?」 突然宙に浮くと、体はそのまま屋上を飛び出して、地面に叩きつけられそうになった。 「きゃああーっ」 今度こそ死ぬ、と思ったとき、ふっと体が軽くなる。 「え?」 コンクリ通路の脇に生えていた木の枝に、スカートのすそがひっかかったのだ。 (ふう) 助かった、と息をつく暇もなく、今度は枝がみしみし折れ、地面にどしんとしりもちをつくはめに。 「あーあ」 余計にすごくなった己の姿を見て、もはやため息しか出ない彼女であった。 (このままじゃ、お兄ちゃんに会えないじゃない) 少し弱気になりそうな自分を奮い立たせようと、彼女はこぶしをにぎりしめる。 チャイムが鳴って、教室に戻りながら、茉理は決心を固めていた。
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