きつねこぶたの創作部屋

きつねこぶたの創作小説ブログです。ただいま<私立クリスティ 学園シリーズ>を連載しています。
[ <9>−1 ]
2007/08/13(Mon) 13:47:36
「よく来たわね」
「それはこっちの台詞だ」
 放課後の屋上。
 茉理は、目の前の相手を、はったと睨んでみせた。
(負けるもんですか!)
 ここでどうしても誤解をとかないと。
 そうしなければ、お兄ちゃんに会いにもいけない。
 彼女は、必死に心を燃え上がらせた。
「で、会長一人なの? 付き添いは?」
「ふざけるな!」
 ざわっと周囲の風がざわめき立つ。
 茉理は、じっと相手を見つめた。
 その目だけが、彼女の最大の武器。
 強い意志だけが、彼女の力となるものだったから。
 茉理の並々ならぬ気配を感じ取ったのか、帝は周囲の風を納めた。
「で? 今更俺に何を弁解する気だ? 言い逃れなどできないぞ」
「そんなことする気もないわ。わたし、あなたに何もしてないもの」
 茉理は受けて立つ。
「何もしてないだと?」
「そうよ、わたしがあの黒板消しを落としたんじゃないわ。そんなこともわからないなんて、あなた、本当に魔力あるの?」
 挑発すると、帝は毛を逆立てた猫のようにいきり立った。
「貴様、この俺を侮辱するとは、いい度胸だ!」
「じゃ、あなたの魔力を使って、真実を突き止めてみせなさいよ。本当にわたしが落としたという証拠を、わたしの前に出してみなさい! そしたらわたしも潔く、あなたの魔法攻撃を受けようじゃないの。そうじゃなきゃ、絶対に絶対に認めないからねっ」
「・・・・・・」



第一巻<9> / TB(-) / CM(-) /

[ <9>−2 ]
2007/08/14(Tue) 08:57:02
「そのぐらい出来るんでしょ? 会長は、一番魔力があるんでしょ? それとも出来ない? ふーん、あなたって、その程度の魔法使いなんだ」
「ふざけるな!」
「怒鳴ってばっかしか出来ないなんて最低ね」
「貴様・・・」
「あーら、本当のこと言われて悔しい? 悔しかったら、さっさと証拠を出して頂戴」
 悔しいが、彼女に何も言い返せず、彼は煮え立つ心を歯を食いしばって耐えていた。
(この女・・・)
「ふーん、やっぱり出来ないんだ。その程度なんだ〜」
 あからさまな挑発に、帝の感情が爆発する。
「いいか、俺様に出来ないことはない! 見てろ、すぐさま証拠を掴んできてやる。そのときには覚えておけ!」
「いいわよ。でもそれまで、魔法攻撃はおあずけってことよね」
「・・・・・・」
「だってそうでしょ? 悪いかどうかわからない相手に対して、攻撃するって最悪よねえ。そういうの、なんて言うか知ってる? 無差別攻撃っていうのよ。うわあっ、会長って、見境なく攻撃する悪い魔法使いさんだったのね。クリスティってそんな人だったんだ」



第一巻<9> / TB(-) / CM(-) /

[ <9>−3 ]
2007/08/15(Wed) 11:18:42
 茉理が会長 帝に挑戦したことは、3日もしないうちに全校生徒に広まっていた。
 当然、皆驚きで、目を瞬かせる。
 こんなことは、今までの学校生活で一度もなかったのだ。
(おい、帝様に挑むなんてさあ)
(ちょっとすごいぞ、あいつ)
 皆の茉理を見る目が、少し変わっていた。
 クラスメイトは興味津々だ。
 何しろほとんどみんなが、茉理が潔白なことを知っている。
(帝様のことだもん。きっとすぐに真実は明らかになるわよ)
(でも、そしたらどうなるのかなあ、川本さん)
 皆のざわめきが、茉理の心に一抹の影を落とした。
 そうなのだ。
 自分の潔白は証明されるが、その分、親友と思ってきた彼女のことがわかってしまう。
 そうしたら帝は、奈々に矛先を変え、攻撃するのだろうか。
 毎朝、登校するたびに、奈々の顔が青ざめていく。
 朝、廊下でそれを見るたび、茉理は胸が痛かった。
 正直自業自得とも思う。
 黒板消しを落としてしまい、そのことを茉理のせいにしてしまったのは、他ならぬ彼女だ。
 もうお互い親友とは呼び合えない間柄になってしまい、心苦しいものがある。
(それもこれも、みんなあんたのせいよ)
 茉理は心の奥で、生徒会長に毒づいた。
(あんたさえ、変なことで怒ったりしなければ、こんなことにはならなかったんですからね。まったくプライドが変に高い人間って、嫌になっちゃう)
 ためいきをつきながら、彼女は授業の準備をするのだった。



第一巻<9> / TB(-) / CM(-) /

[ <9>−4 ]
2007/08/16(Thu) 10:56:08
 廊下でためいきをついている人間が、茉理の他にもう一人いた。
 生徒会書記 山下 英司。
「参ったなあ」
「やるせないためいきだねえ、英司君」
 いきなり耳元でささやかれ、彼は飛び上がった。
「ちょっ、ちょっとっ、先輩っ、おどかさないでください」
「リアクションがまたいいね、その驚いた表情なんて、最高だよ」
 満足そうに笑う雅人を、英司がぎろっと睨んだ。
「もう! ふざけるのも対外にしてください」
 こっちの気も知らないで、とぶつぶつ言う英司に、雅人は笑ってみせた。
「君は本当に可愛いね。今度お兄ちゃんとデートしない?」
「はあ? 馬鹿な事言ってないで、とっとと消えてください!」
 でないと本当に消しますよ、といつにもなく凄みのある声で怒鳴られ、雅人は眉を吊り上げた。
「ふーん、そんなに機嫌が悪いなんて、英司君らしくないね。さては例の一件かな」
「・・・・・・」
「図星か。まあ、そうだろうと思ってたけど」
 雅人の言葉に、英司は神妙にうなずいた。



第一巻<9> / TB(-) / CM(-) /

[ <9>−5 ]
2007/08/17(Fri) 09:23:03
「どうすりゃいいんですかね」
「どうすりゃって、そりゃ帝に報告しないと」
「そうなんですけど・・・」
 英司の悩みがどこにあるのか、雅人にはよくわかっていた。
 つい3日ほど前、帝から命が下ったのだ。
『過去に飛んで、俺に黒板消しを投げつけたのが、あの女だと確認してこい』
 英司は、クリスティ分家の出で、風系統の魔力を操るのに長けている。
 『風』は移動、速度などに関係する魔法にすぐれ、時を渡ることも術によっては可能だ。
 彼は早速指示通り、過去に行ってきたに違いない。
 そして結果は、思わしくなかったのだ。
「でも雅人先輩。結果が予想外だったって、よくわかりましたね」
「それはそうでしょ。だって帝相手に、普通あそこまでタンカきる? 何もしてなかったからこそ出来ることだよ」
 ふっと笑みを漏らしながら、雅人はつぶやいた。
「驚いたよね、正直あんなレディだとは思わなかった」
「俺もです。普通、転校しますよ、あれだけやられれば」
「単なるいじっぱり? いいや、それだけじゃないね」
 雅人は、薔薇をいじりながら考える。
「何かあるね、彼女。そうまでして、この学園にいたい理由が」
「え?」
「僕の考えでは、それは愛のためだと思うよ。いたいけな少女が命をかけて、学園に残る。それはもう、『あい』という二文字のためでしかない!」
(・・・どこでどうすればそんな考えが)
 ついていけない英司だったが、自分の置かれた立場を考え、また深いため息を漏らした。



第一巻<9> / TB(-) / CM(-) /



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