きつねこぶたの創作部屋

きつねこぶたの創作小説ブログです。ただいま<私立クリスティ 学園シリーズ>を連載しています。
[ <13>−1 ]
2007/09/13(Thu) 12:24:59
(今日って、13日の金曜日かあ)
 教室の窓をみながら、茉理はぼんやりしていた。
 金曜日の6時間目は、ホームルームと決まっている。
 今日の議題は、来るべき球技大会の種目決めだった。
 学級委員が前に出て、種目や人数を書き、決をとっている。
(別になんでもいいけどね。でもわたしと組みたい子なんていないだろうな)
 一人でコートの隅で、ぼーっとしてられるバスケがいいかな。
 茉理はそう思い、バスケットボールに名前を入れていた。
 窓辺からは暖かな陽が差し込み、穏やかな5月の午後を感じさせる。
 ちなみに奈々も、バスケ部だから---というのかどうか知らないが、バスケに入っていた。
 あれから一言も口を利いてないのが、むなしかったりする。
(せめてきちんと話したいな)
 せっかく友達になれたとこだったのに。
 茉理は、自分の机より3つ前に座っている奈々の背中を、悲しそうに見つめていた。


第一巻<13> / TB(-) / CM(-) /

[ <13>−2 ]
2007/09/14(Fri) 09:24:31
 6時間目が終わると、茉理は立ち上がった。
 今日は、トイレの掃除当番だ。
 他の生徒たちと一緒に掃除を済ませ、彼女はまた教室に戻ってくる。
「?」
 何やら教室が騒がしかった。
(どうしたのかな)
 茉理が入っていくと、しーんと静まり返る。
 クラスメイトが集まっている中心に、見知らぬ女生徒がいた。
 彼女は茉理を見つけると、にっこりと笑む。
「こんにちは。後野 茉理さん」
「あ・・・こんにちは」
 茉理は、目を瞬かせながら答えた。
「自己紹介がまだでしたわね。わたし、2年E組 円城寺 美奈子です。どうぞよろしく」
 手を差し出され、茉理は困惑しながら、握手した。
「今日はご挨拶に来ました。わたしの好敵手となるあなたの顔も見たかったし」
「は?」
 茉理は聞き返す。好敵手って、何?
 わかっていない彼女に、美奈子は人差し指を突き出した。
「最初に宣言しますけど、わたし、絶対あなたに負けませんから!」
「一体何のことですか」
「まあ、知らない振りしてもだめよ。あなた、ちゃんと申し込みを受けたんでしょ?」
「は? 申し込み?」
「花を受け取ったでしょ! しらばっくれてもだめ。ちゃんとわかってるんだから」



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[ <13>−3 ]
2007/09/15(Sat) 08:55:28
「花って---」
 茉理は首をかしげ、あっと小さくつぶやいた。
 かばんを開け、中からつぶれかかった野薔薇を出す。
「ほら、ちゃんと受け取ってるじゃない」
 勝ち誇った美奈子の声に、おおーっとクラスメイトのざわめきが広がる。
「本当だ」
「美奈子姫の言うとおりだぜ」
「まさか---帝様が?」
「どうして後野さんが!?」
 信じられない、とみな、口々に言う。
「ちょっと待って! わたしには、何がなんだかわかんないよ」
 茉理は、ざわめきに負けないように叫んだ。
「この花、昨日の夜、突然部屋の窓から飛び込んできたのよ! 机の上に置いといたはずなんだけど、今朝、学校に来てみたら、ちゃんとかばんの中に入ってたし。どうなってるのか、誰か説明してよ。何なの、これ」
「それは、この学園最大の生徒会イベントへの、参加招待状だよ」
 ざわめきの背後から、穏やかな声が聞こえた。
 みな、唖然と声の主をみつめる。
「嘘・・・雅人様!?」
 奈々の黄色い声が、教室中に響き渡った。
 瞬間移動したかのように、雅人がにこやかに立っている。

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[ <13>−4 ]
2007/09/16(Sun) 08:41:44
「はあーい、後野 茉理姫」
 ごきげんよう、と笑顔で言われ、茉理は目を瞬かせた。
「美奈子姫、君も一緒かい? 敵の視察ってとこかな」
「当然です」
 美奈子の小さな唇から、震える声が漏れた。
「帝様はどうして---どうして私を捨てたりするのですか! あんなにやさしくしてくださったのに」
「それは君が一年という期限付きの相手だったからだよ」
「本気になってくださらなかったんですね」
「そのようだね」
 美奈子の顔が、青白くなる。
「だからって---だからって、どうして、こんな魔力ゼロ、何のとりえもない普通の女生徒と、帝様の愛を競って戦わねばならないんですの? ひどい侮辱ですわ!」
「・・・・・・」
「相手がこれでは、わたしが勝つのは当然としても、やっぱり後味が悪いです。帝様にお会いして、抗議してきます!」
 美奈子はぼろぼろ泣きながら、教室を飛び出していった。
(な、何なの・・・)
 茉理は、唖然とその姿を見送った。



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[ <13>−5 ]
2007/09/17(Mon) 10:03:16
「やれやれ、彼女もあきらめがわるいね」
 雅人は、肩をすくめる。
「雅人先輩、本当なんですか。後野さんのエントリーの話」
 奈々が、甘えた声で雅人に聞いた。
「うん、そうだね。そういうことになったみたいだ」
 雅人の声に、奈々は驚きのまなざしを茉理に投げる。
「ちょっと待ってください。何かの間違いじゃ」
「間違いじゃないよ。彼女はちゃんとエントリーされてる。帝も知ってるよ」
 ざわざわと、困惑の声があがった。
「でも副会長、これはあんまりじゃ」
「帝様は、何をお考えなのですか!」
「そうですよ、よりによって、彼女は」
 雅人は微笑み、茉理に近づいた。
「本人が、よくわかっていないようだから、説明しないと。彼女を借りるよ」
「え!?」
 雅人は、問答無用で茉理の腕を掴み、廊下へと連れ出す。
 あとには、疑惑と困惑の渦中に投げ込まれたクラスメイトたちが残された。



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