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2007/10/22(Mon) 13:11:27
「やあ、今日も朝からお出ましなんて、素晴らしいね、帝」 「うるさい!」 ホームルーム前の朝のひと時。 生徒会室には、少しいつもと違う雰囲気が漂っていた。 帝は黙って、椅子に座り、指を組み合わせて考え込んでいる。 心配そうな顔の英司と、あいかわらず表情の読めない直樹。 そしていつも動じることなく、自分の世界に浸っている雅人は、朝からモーニング・ティーは何がいいかな、とにこやかにカップを手にしていた。 「そうかりかりしなさんな、帝」 いい香りのする薔薇の花びら入り紅茶を、雅人は帝の前に差し出した。 「まだ大事にはなってないだろ。ちょっと校内で違反をした生徒が出ただけのことじゃない」 「ちょっとした違反ね」 きらりとメガネをきらめかせ、直樹は小型PCを取り出す。 「一応昨日の状況を報告しておくよ。校内監視カメラが写した映像によれば、魔法系統は風。攻撃というより補助魔法のたぐいだ。でも補助でも使いようによっては、立派な攻撃魔法になる。発生地点は、校門より約10メートルほど離れた道のど真ん中。ターゲットは、後野 茉理。犯人は不明、犯行動機も不明」 「いいねえ、この雰囲気。なんかはやりの刑事ドラマみたいじゃない。スリルとサスペンス、張り込みに意外な事実!」 「そうですか? 俺、スリルとサスペンスより、あっちの方がいいなあ。ほら、あのドタバタした所長さんとかいる面白系」 「続けて良いかな、二人とも」 凄みをおびた声で、直樹は雅人と英司を牽制する。 「俺は、話を中途で切られるのは嫌いでね。最後まで聞いてもらえると嬉しいんだが」 メガネのフレームに手を沿え、あげながら、不適な笑みが二人を包む。 「なんなら午後のお茶は、俺が入れてやろうか。特製スペシャルなものを」 「け、け、結構だよ。君のお茶には、ひ、品というものがないし……」 「お、俺も……」
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2007/10/23(Tue) 10:00:54
「そりゃ、残念」 上ずった声で否定する二人に、にやっと笑うと、直樹はまた続けた。 「まあ、後野 茉理を狙ったということは、彼女に一物ある者だろう。いろんなケースが考えられるな。例えば帝の熱烈な信奉者になってる生徒とか」 「後野さんが、こないだ帝を汚したって、怒って――ですか」 「そう。なのに彼女は、どうしてか帝の彼女候補にあげられてしまっている。それを許せないと思う者がいたとしても不思議じゃない」 「なるほどね。じゃ、あとのパターンは?」 雅人がやけに真剣な顔になったのを見て、直樹は眉をひそめた。 (食えない奴だな。今度は何を考えてる?) 「言うまでもなく、今度のイベントで、彼女のライバルとなる少女だ。円城寺 美奈子のほかに、エントリーされてるのはもう1人」 「もう1人?」 黙って聞いていた帝が、声をあげた。 「俺は聞いてないぞ、他の奴のことなんて」 「本人に了解を取ってからの方がいいかと思ってね。昨日ちょうど話がついたんだよ、俺が推薦する少女とは」 「誰だい?」 「一年E組 早川 響子だ」 一瞬雅人は妙な顔をし、それからにやりと笑った。 「君も人のことは言えないようだね、直樹君」 (ふふっ、僕といい勝負だね。後野 茉理をエントリーしたのと同じように、君は君で帝に仕掛けているわけか。どっちが策士なんだか)
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2007/10/24(Wed) 09:29:52
薔薇を取り出し、弄ぶ雅人に、直樹はつぶやいた。 「おそらく君の考えてることは、半分もあたってないよ」 「そう、じゃどうして彼女を?」 「そうだね。あえて言うなら俺なりの考えがあってのことかな」 二人の会話は、横で聞いている者には、まったく意味不明だった。 帝は眉間にしわをよせ、英司はきょとんとしている。 「ちなみに彼女の扱う専門は炎。だが」 「ま、学園に名の響く天才少女ともなれば、他系統の補助魔法ぐらい使えるだろうね」 「そういうことだな」 雅人の言葉に、直樹はあいずちをうった。 「以上が今、正確にわかっていることだ。ああ、後野 茉理は無事だそうだ。本当に運が強いというかなんというか」 直樹はふっと笑む。 「一応、校則違反者のことは、調べてそれなりの処置をしないとな。魔法サーチの強化もしておくよ」 もしまた誰かが魔法を使ったら、ただちに見つけ出し、反応するようにね、と言うと、直樹は自分の席に静かに座った。 「帝は、誰だと思います? ……帝?」 英司の無邪気な声に、帝は何も答えない。 ただ黙って、自分の中に沈みこんでしまっている。
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2007/10/25(Thu) 14:27:43
「み・か・ど。何か気になることでも?」 「……いや」 雅人の不思議そうな目線に、帝は顔をあげ、ため息をついた。 「直樹。魔法サーチを厳重にしておけ。それから各自、休み時間は、それぞれ校内を回り、不振なことがないか、チェックしろ。ああ、朝のホームルームで、もう一度この校則を見直すように、各クラスの代表に指示しておけよ。特に新1年生のクラスは、しっかりたたきこんでおくように」 それだけ言うと、帝は立ち上がった。 タイミング良く、朝のチャイムが鳴り響く。 「おっと。タイムリミットだね」 「やばっ。俺、一時間目の数学、宿題やってないや」 お先にっ、と一声あげると、英司はすばやく生徒会室を出て行った。 「おーお、あいかわらず早いねえ。直樹君、君もどう? 教室までの駆け込みダッシュ」 「遠慮しておくよ。俺はゆっくり行くさ」 「君のとこって、1時間目、テストじゃなかった?」 「出るところはほぼ予測出来てるし、問題ないよ」 直樹は眼鏡をあげると、じゃ、と鞄を手にゆっくり歩き去る。 「さてと、僕はどうやって教室に入ろうかな。ああ、そうだ、僕の歩いた廊下をすべて、薔薇で埋め尽くすというのはどうかな。全女生徒たちに、僕の足跡を示し、赤い薔薇の絨毯を提供しようではないか」 「そんなことしてみろ! 俺がその薔薇すべて燃やし尽くしてやる!」 不機嫌な声で帝は怒鳴り、さっさと行け、とうながした。 雅人は肩をすくめ、それ以上何もせずに生徒会室を出る。 (帝……相当気にしてるな) 閉めたドアの向こうを見ながら、雅人はふっと笑んだ。 (いいねえ、もう今からその気になってるよ――彼女に)
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2007/10/26(Fri) 10:12:11
誰もいなくなった生徒会室で、モニターがカタカタ映像を流していた。 先ほど直樹が言っていた監視カメラのものだ。 帝は、食い入るようにそれを凝視する。 風が彼の良く知る少女を巻き上げ、10メートルほども高くあげた。 「わあああーっ」 少女の悲鳴と共に、風はやみ、落下が始まる。 (ここまではいい。だが) 問題はこのあと。 彼女は確実にアスファルトに落下。無事ではすまない状態になる――はずなのに。 突然アスファルトから砂が飛び出してきて、山を作り、少女を保護した。 カチッと映像が止まる。 帝はまた再生ボタンを押し、彼女が砂のクッションに落ちる場面を再現する。 何度も何度も繰り返し、そこだけを集中して見た。 そして何度見ても、同じなのを確認すると、映像を切り、目を閉じる。 (あいつがどこの誰に狙われようと、俺の知ったことじゃない。だが) 今のは、確実に魔法。 (あいつを保護する者が、この学園にいるなんて) 帝の顔は、複雑になる。 (一体誰なんだ、あいつを守ろうとするやつは……)
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