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2007/10/31(Wed) 08:55:32
(なんか体がだるいなあ) 昼休み、茉理は、屋上でぼーっと雲を見ていた。 春を感じさせるにはもってこいのポカポカ陽気。空には白い雲が浮かんでいて、すっきりしない頭じゃなければ、気分も最高なのだけれど。 『後野さん、今、どこ?』 ふいに頭に響いた声が、茉理を呼び起こす。 『う、うわっ、えーと遠野君?』 『辞書返そうと思ってるんだけど、教室にいないし。今、どこ?』 『屋上なんだけど…… 』 茉理が答えを返した瞬間。 シュッと横の空間が歪んだ。 「え、え、何?」 驚くまもなく、すっと人影が現れて形を取る。 思わずしりもちをついた茉理に、現れた人間――遠野 斎は、くすくす笑いながら、片手を差し出した。 『ごめん、ごめん、驚かせちゃったみたいだね』 「驚くわよ、普通。あー、びっくりした」 斎の手につかまって立ち上がり、スカートのほこりをはらう。 (まったく心臓に悪いんだから)
第一巻<18> / TB(-) / CM(-) / ↑
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2007/11/01(Thu) 10:02:03
ため息をついた茉理を、面白そうに斎は見た。 『君、そういえば今年転入してきたんだっけ。魔族名は?』 「あの、わたし、そういうの、まだよくわかんないんだけど」 戸惑う茉理に、斎はああ、とうなずいた。 『日本の戸籍上の名前じゃなくて、僕たち魔族は、ご先祖より受け継いできたファミリー・ネームがあるんだよ。僕はクリスティ。ご先祖は、この日本に最初に渡ってきた魔族で、アルツール・クリスティというんだ』 「あ、知ってる、その名前は」 こないだ友達に説明されたことを言う。 『アルツールには、5人の息子がいたんだ。僕は末の息子レイオスの子孫でね。レイオスは、大地に属する魔法に長けていた。だからレイオスの血を受け継ぐ者は、たいてい地属性の魔法に向いている。――こういう風に、それぞれこの学校の生徒は、直系傍系であれ、魔族のご先祖様と、その家の名と、魔力を持っているんだ。この学校に入学を許可されたんなら、当然君のご先祖にも、魔力を持った人がいたはずだし、君にも何らかの属性の魔力が備わっているはずさ』 「でもわたし、よくわからないのよね、それ」 茉理は首をかしげた。 「ここに転校してきたのだって、ただ会いたい人がいたからだし、魔族の話なんてまるっきり知らなかった」 『そんな馬鹿な』 斎は驚きのまなざしを、彼女に投げる。 「だから今でも、魔法なんて使えないし、ご先祖に魔族がいたなんて、まったくわからない。普通の女の子だよ、わたし」 『そうかな? そうでもないけどね』 斎は微笑んだ。
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2007/11/02(Fri) 10:13:07
『君は、気づいてないだけじゃないかな。確かに今はわからないかもしれないけど――少なくとも君に、魔力が存在しないってことはないよ』 「えーっ、どうして?」 『僕とこうして思念会話が出来るじゃないか』 斎は、じっと茉理を見つめた。 『思念会話は、かなり高度な魔力を持ってないと、送受信不可能なんだ。君には、確実に魔力がある。まだ目覚めていないけどね』 「嘘……」 茉理は、思いもかけない事実に呆然とした。 (わたしに魔力が? そんなの信じられないよ) 『この学校には、いろんな資料があるし、良かったら一緒に調べてみないか。君のご先祖様のこと』 「……」 『君だって、知りたいだろう?』 茉理は、戸惑いながらもうなずいた。
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2007/11/03(Sat) 12:12:21
体育館の横にある、古びた洋館――特館は、静まり返っていた。 放課後で授業もないせいか、小さなお化け屋敷のように見える。 (ここって、いつ見ても不気味よね) 建物を眺め、茉理は思った。 裏手にまわると、こないだ斎と会った小さな庭園がある。 (遠野君、まだ来てないね) 待ち合わせたベンチに腰掛け、彼女はまた空を仰いだ。 (わたしのご先祖様か) 今までの人生で、先祖のことなんて考えたこともなかった。 学校が始まって一ヶ月と少し。 これまで過ごしてきた日常とは、あまりにもかけはなれている世界。 茉理はそこまで考えて、くすっと笑った。 (小学校のときの友達に、今、わたしがどんな生活をしてるか言っても、信じてはもらえないよね) 親に話しても、きっと精神病院に連れていかれることだろう。
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2007/11/05(Mon) 05:45:16
(この学校の生徒は、みんな魔族――ってことは、もしかしてお兄ちゃんも?) 茉理は、はっとした。 急に転校してしまった初恋の人。 それこそ夜逃げでもするかのように、突然に、横の家から人がいなくなった。 朝、起きてみたら、いつも挨拶をかわす窓はぴったり閉まっていて――朝ごはんを食べるときに、母親から聞かされたのだ。 その母親も、首をひねっていたから、余程急ぎの事情があったんだろう。 (魔族だって、わかったからかな) 明人の母親が突然再婚したのは、魔族がらみの問題が発生したからなのだろうか。 『お待たせ……どうしたの?』 考え込んでいる茉理の前に、斎が現れた。 「あ、ご、ごめん。なんでもないの」 覗き込んでくる斎に、思わず顔が赤らむ。 横に置いた鞄を持ち、あわてて立ち上がった。 「早く行こ」 不思議そうに目を瞬かせながら、斎はうなずいた。
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