きつねこぶたの創作部屋

きつねこぶたの創作小説ブログです。ただいま<私立クリスティ 学園シリーズ>を連載しています。
[ <20>−1 ]
2007/12/04(Tue) 09:33:58
 しとしと降りしきる雨は、プラットホームに、しめった風をもたらした。
 反対側のホームに、滑り込んでくる電車を見て、茉理は、ふと思い出す。
(こないだ、遠野君、この電車に乗ったんだっけ)
 彼の家は、こっち側なのだろうか。
(今……どうしてるのかな)
 透明になっても、家に帰りついたとは思うのだが。
 確認するすべがないことに、苛立ちを感じながら、茉理は、自分の側に来た電車に乗り込んだ。
 ドアに身をもたせかけ、彼女は、先ほどの英司との会話を思い起こす。
(遠野君、どうしてわたしにだけ、声を送ってくれたのかな)
 てっきり、生徒会の人たちとは、会話しあってるのだとばかり、思っていたのに。
 やっぱり嫌っているのだろうか。
(親戚なんだろうけど、いろいろ人間関係、複雑そうだもんね)
 本家とか分家とか。
 まして魔力や呪いなんてものまで、絡んでくると、どうにもややこしくなりそうだ。
(なんか、あの家系、まともな人っていなさそうだし――あ、でも、さっきの山下先輩は、まあ普通だったかな)
 ふっとため息を漏らしたとき、最寄り駅に着いた。
(雨、やまないな)
 明日も、こんな天気なのだろうか。
 憂鬱な気分で、茉理は駅を出た。




第一巻<20> / TB(-) / CM(-) /

[ <20>−2 ]
2007/12/05(Wed) 12:02:44
「やみませんね、雨」
「そうだな」
 生徒会業務も終わり、めいめい帰宅の徒についている。
 校門で、英司は帝と二人、迎えの車を待っていた。
 先に帝の――本家の車がやってきて、彼が乗り込む。
「帝、じゃまた明日」
「ああ」
 走り出す黒塗り高級車のタイヤが、地面に出来た水鏡をはじき返す。
 雨にも負けず、それなりのスピードで、車は走った。
「帝様、ご自宅でよろしいですね」
 運転手の声に、彼は組んでいた腕をはずし、窓の外を見た。
 車のガラス窓を、たたきつけるように雨は降る。
「……遠野に行く」
 帝の唇から、静かに、目的地変更が告げられた。
 心得たように、運転手はうなずき、車は、次の交差点を左に曲がった。





第一巻<20> / TB(-) / CM(-) /

[ <20>−3 ]
2007/12/06(Thu) 14:48:54
 本邸には及ばないが、遠野 斎の家も、それなりに大きな一軒家だった。
 静かな高級住宅街の、庭付きガレージ付き一戸建て。
 赤レンガで出来た洋風の家には、門のところに、大きな花かごが下がっていた。
 運転手が降りて、インターフォンを押す。
 しばらくすると、門がオートロックで左右に開き、車は、ゆっくりと中庭に入っていった。
 玄関の扉を開けて、白いワンピースを着た女性が出てくる。
 傘を持ち、彼女は、車の後部座席に向かって、深々とお辞儀をした。
 帝は、車から降りて、運転手が差した傘を受け取り、返礼を返す。
「帝様、ようこそ」
 白いワンピースの女性が、優しく微笑んだ。
 少し病弱な顔色は、斎によく似ている。
「叔母さんも、お元気そうですね」
「昨日は、斎がご迷惑をかけたとか――本当に失礼しました」
「いいえ、こちらも突然すみません」
 玄関まで歩きながら、二言三言、言葉を交わす。
 居間に上がると、そこには、今にも薄くて、向こうが透けてみえる体をした少年が、待っていた。
 硬い表情で、彼はお辞儀をする。
 半ば睨むような視線を投げ、帝は、彼の前のソファに座った。




第一巻<20> / TB(-) / CM(-) /

[ <20>−4 ]
2007/12/07(Fri) 11:04:13
「今、お茶をお持ちしますね」
 ワンピースの女性――斎の母親は、そう言うと、二人を残し、リビングの扉を閉める。
 静寂と無言が、辺りに満ちた。
 帝は黙って、やっと輪郭が見える斎を見つめる。
 何を考えているのかわからないが、斎も静かに帝を見つめ返した。
 薄い瞳は揺らいで、悲しんでいるように見える。
 母親が、お茶とクッキーを並べた皿を持ってきて、二人の前に置いた。
「たいした物はありませんが、帝様、よろしかったら夕食を準備させていただきますね」
 そう言って微笑むと、彼女は、斎の前に、白い紙の束とボールペンを置いて、出て行く。
 それを見た帝の目が、つと細められた。
 彼は、嫌そうにその紙を一瞥し、じっと斎を睨む。
 斎の表情は動かない。
 視線をはずすでもなく、真っ直ぐ帝を見返した。



第一巻<20> / TB(-) / CM(-) /

[ <20>−5 ]
2007/12/08(Sat) 08:51:54
 二人きりになると、帝は、彼に挑むような視線を投げた。
「単刀直入に聞く。お前は、後野 茉理と言葉をかわしているな」
 斎のまつげが伏せられる。
「先日、彼女は、何者かに襲われた。そのとき、地属性の魔法によって、彼女は助けられ、無傷で帰宅した。――あれは、お前だな」
 斎は目を開け、静かにうなずいた。
「何故、あいつを助けた?」
 斎は、しばらく考えていたが、すっと指をボールペンに伸ばす。
 彼の指が、黒いボールペンに触れた瞬間。
 ピシャッと帝の手が伸びて、ボールペンをひったくった。
「こんな物で答えるな! お前、思念会話が出来るのだろう?」
「……」
「何故、俺に、それで言葉をぶつけてこない! 俺を馬鹿にするつもりか!」
 青筋を立てて、帝は怒鳴り、ボールペンを握りしめる。
 軽く握っただけで、それはボキッと嫌な音を立て、折れた。




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