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2007/12/04(Tue) 09:33:58
しとしと降りしきる雨は、プラットホームに、しめった風をもたらした。 反対側のホームに、滑り込んでくる電車を見て、茉理は、ふと思い出す。 (こないだ、遠野君、この電車に乗ったんだっけ) 彼の家は、こっち側なのだろうか。 (今……どうしてるのかな) 透明になっても、家に帰りついたとは思うのだが。 確認するすべがないことに、苛立ちを感じながら、茉理は、自分の側に来た電車に乗り込んだ。 ドアに身をもたせかけ、彼女は、先ほどの英司との会話を思い起こす。 (遠野君、どうしてわたしにだけ、声を送ってくれたのかな) てっきり、生徒会の人たちとは、会話しあってるのだとばかり、思っていたのに。 やっぱり嫌っているのだろうか。 (親戚なんだろうけど、いろいろ人間関係、複雑そうだもんね) 本家とか分家とか。 まして魔力や呪いなんてものまで、絡んでくると、どうにもややこしくなりそうだ。 (なんか、あの家系、まともな人っていなさそうだし――あ、でも、さっきの山下先輩は、まあ普通だったかな) ふっとため息を漏らしたとき、最寄り駅に着いた。 (雨、やまないな) 明日も、こんな天気なのだろうか。 憂鬱な気分で、茉理は駅を出た。
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2007/12/05(Wed) 12:02:44
「やみませんね、雨」 「そうだな」 生徒会業務も終わり、めいめい帰宅の徒についている。 校門で、英司は帝と二人、迎えの車を待っていた。 先に帝の――本家の車がやってきて、彼が乗り込む。 「帝、じゃまた明日」 「ああ」 走り出す黒塗り高級車のタイヤが、地面に出来た水鏡をはじき返す。 雨にも負けず、それなりのスピードで、車は走った。 「帝様、ご自宅でよろしいですね」 運転手の声に、彼は組んでいた腕をはずし、窓の外を見た。 車のガラス窓を、たたきつけるように雨は降る。 「……遠野に行く」 帝の唇から、静かに、目的地変更が告げられた。 心得たように、運転手はうなずき、車は、次の交差点を左に曲がった。
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2007/12/06(Thu) 14:48:54
本邸には及ばないが、遠野 斎の家も、それなりに大きな一軒家だった。 静かな高級住宅街の、庭付きガレージ付き一戸建て。 赤レンガで出来た洋風の家には、門のところに、大きな花かごが下がっていた。 運転手が降りて、インターフォンを押す。 しばらくすると、門がオートロックで左右に開き、車は、ゆっくりと中庭に入っていった。 玄関の扉を開けて、白いワンピースを着た女性が出てくる。 傘を持ち、彼女は、車の後部座席に向かって、深々とお辞儀をした。 帝は、車から降りて、運転手が差した傘を受け取り、返礼を返す。 「帝様、ようこそ」 白いワンピースの女性が、優しく微笑んだ。 少し病弱な顔色は、斎によく似ている。 「叔母さんも、お元気そうですね」 「昨日は、斎がご迷惑をかけたとか――本当に失礼しました」 「いいえ、こちらも突然すみません」 玄関まで歩きながら、二言三言、言葉を交わす。 居間に上がると、そこには、今にも薄くて、向こうが透けてみえる体をした少年が、待っていた。 硬い表情で、彼はお辞儀をする。 半ば睨むような視線を投げ、帝は、彼の前のソファに座った。
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2007/12/07(Fri) 11:04:13
「今、お茶をお持ちしますね」 ワンピースの女性――斎の母親は、そう言うと、二人を残し、リビングの扉を閉める。 静寂と無言が、辺りに満ちた。 帝は黙って、やっと輪郭が見える斎を見つめる。 何を考えているのかわからないが、斎も静かに帝を見つめ返した。 薄い瞳は揺らいで、悲しんでいるように見える。 母親が、お茶とクッキーを並べた皿を持ってきて、二人の前に置いた。 「たいした物はありませんが、帝様、よろしかったら夕食を準備させていただきますね」 そう言って微笑むと、彼女は、斎の前に、白い紙の束とボールペンを置いて、出て行く。 それを見た帝の目が、つと細められた。 彼は、嫌そうにその紙を一瞥し、じっと斎を睨む。 斎の表情は動かない。 視線をはずすでもなく、真っ直ぐ帝を見返した。
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2007/12/08(Sat) 08:51:54
二人きりになると、帝は、彼に挑むような視線を投げた。 「単刀直入に聞く。お前は、後野 茉理と言葉をかわしているな」 斎のまつげが伏せられる。 「先日、彼女は、何者かに襲われた。そのとき、地属性の魔法によって、彼女は助けられ、無傷で帰宅した。――あれは、お前だな」 斎は目を開け、静かにうなずいた。 「何故、あいつを助けた?」 斎は、しばらく考えていたが、すっと指をボールペンに伸ばす。 彼の指が、黒いボールペンに触れた瞬間。 ピシャッと帝の手が伸びて、ボールペンをひったくった。 「こんな物で答えるな! お前、思念会話が出来るのだろう?」 「……」 「何故、俺に、それで言葉をぶつけてこない! 俺を馬鹿にするつもりか!」 青筋を立てて、帝は怒鳴り、ボールペンを握りしめる。 軽く握っただけで、それはボキッと嫌な音を立て、折れた。
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