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2007/12/28(Fri) 17:03:16
次の日。 予告したとおり、斎は学校に登校してきた。 いつもより表情が明るくなって、クラスメイトたちは首をかしげたが、あとは変わらず授業を受ける。 彼が登校してきたので、茉理もほっとした。 お昼休み、屋上で弁当を広げていると、斎から声が送られてくる。 『後野さん、昨日はありがとう。今日は放課後、生徒会室に行こうと思うんだ』 「そっか。良かったね」 茉理は青い空を見ながら、気分爽快に返事をした。 (誤解が解けて良かった。これで遠野君は、生徒会の先輩たちとお話出来るようになったし) 『あのさ……後野さん』 少々ためらうような言葉に、茉理はどきっとする。 『大丈夫だとは思うけど、一応気をつけて』 「え?」 『ほら、こないだ後野さん、魔力で襲われたじゃないか。それってこの学校内に、後野さんの存在を疎ましく思ってる人がいるってことだよ』 「……」
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2007/12/29(Sat) 09:01:01
『何かあったら、すぐに言葉を送って。出来るだけ助けるから』 「あ、ありがとう」 寒気がして、茉理はぶるっと震えた。 『じゃあまた』 そう言って声は途絶え、茉理の頭に静寂が戻ってくる。 でも彼女の心には、一抹の不安がよぎった。 (わたしのことを、嫌ってる人か――) この間のことを思い出し、茉理ははっとする。 (そういえばあの時、砂に助けられたっけ) 特館で、斎が放った魔法でも、魔獣は砂となった。 (じゃ、あの時わたしを助けてくれたのって、遠野君なのかな) もしかして彼は知っているのかもしれない。 茉理を狙う誰かのことを。 その理由も。 (だからあんな忠告をしてくれたんだ) はああっと大きなため息をつき、茉理は弁当の蓋を閉める。 お腹はすいていたが、なんか食欲がなくなった。 のんきに青空の下、弁当食べてる場合ではないのかもしれない。 彼女は立ち上がると、神妙な顔をして、あちこちに目を配りながら、教室に戻っていった。
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2007/12/30(Sun) 14:12:06
「ようこそ、我らの城へ。愛しの君よ」 にこやかに微笑んで、雅人は斎を迎えた。 放課後の穏やかな日差しが、窓越しに入ってくる。 広い部屋には赤い絨毯が敷き詰められ、大きな円卓が真ん中にあった。 そして何故か天井からは、薔薇の真っ赤な花びらが、雨あられと大量に降っている。 「ここが生徒会室の会議場。中世は円卓の騎士の世界を連想させるとは思わないかい。彼らは国と自らの主君、そして愛のために激しく生き、散っていった。誇り高き騎士達の冒険談を語るならば、この僕の言葉をいかに駆使しても言い足りないよ」 『……でも円卓の騎士の時代には、薔薇の花びらの雨は降ってこなかったと思うんですけど』 斎の返事が聞こえて、英司はくすくす笑った。 「なんだい、英司君。君は、この演出に文句でもあるのかな」 憮然とした雅人に、英司は、斎の肩に自分の腕をからめて答える。 「えーと、先輩の歓迎イベントに感動して、言葉も出ないそうですよ。ね、斎」 同意を求められ、斎は不承不承うなずいた。 「そうかそうか。さあ、こっちへおいで。可愛い弟よ。この雅人様が、おいしいローズティーを入れてあげるから」 「その前に、いい加減、このはた迷惑な行為をなんとかしろ!」 中央の椅子に座り、頭に大きなヘルメットをかぶった帝が、ドンっと卓を叩く。 「薔薇の花びら降り注ぐ下で、優雅に歓迎のお茶会をするというのが僕のプランさ。遠く離れて三千里、今まで探しても会えなかった愛しい弟との感動の体面! このくらいの演出は必要だよ。ねえ、いいだろう? 帝」 「良くない!」 「そうだね、せっかくのお茶も、カップに花びらが浮くだけではなく、積もり積もって飲めなくなるのが現実だね」 黒い雨傘をさしながら、せっせとPCを打ち続けている直樹も同意した。
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2007/12/31(Mon) 08:34:11
「なんなら、お茶は俺が入れてやろう。雅人、お前も座ったらどうだ?」 眼鏡のフレームをあげながら、直樹はふっと微笑んでみせる。 瞬間。 雅人は顔をしかめて、パチッと指を鳴らした。 降り注いでいた花びらが止まる。 「英司、掃除しろ」 「はーい」 帝の一言で、英司が指を鳴らした。 すると突風が吹き、窓の外へ花びらを飛ばしていく。 あっという間にすべての花びらは吹き飛び、赤い絨毯と円卓だけになった。 「味気ない……なんと味気ない光景なんだ!」 雅人はその場に膝をつき、悲劇に打ちひしがれるポーズを取る。 「これが僕たちが、これから生涯の兄弟の契りをかわす場所なんて! ああ、かの有名な中国の古書『三国志』に出てくる王の末裔とその親友たち、兄弟の契りをかわした場所はといえば、桃の花咲く庭園の中なのだ。それなのに僕たちは今、こんなお粗末な殺風景な場所において、義兄弟の契りをかわさねばならぬとは! 僕の心は、もう哀しみで引き裂かれてしまいそうだ!」 大仰に自らの体を両手で抱きしめ、身をよじらせて涙する雅人に、その場の全員が白い目を向けた。
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2008/01/01(Tue) 10:12:30
「あの、もう一つ、掃除しときますか」 「ああ、そうしてもらおうか」 英司と帝の会話を聞いて、あわてて雅人は立ち上がる。 「もう、二人ともひどいなあ。今日初めて勇気を出して、生徒会室のドアを叩いた可愛い後輩の気持ちをなごませてやろうという、この気配りがわからないなんて」 「気配りだったんですか」 「いや、それは逆効果だろうな」 直樹が傘を畳みながらつぶやく。 「おそらくこれで生徒会のイメージが、可愛い後輩の中では、思いっきり落ちた確率の方が高い」 きっぱりそう言うと、彼は笑みを見せて、斎に言った。 「気にしないでくれ、斎。来てくれて嬉しいよ。若干妙なのがいるが、ほっといていい。どうしても始末に終えないようなら、俺に相談してくれ」 『はあ……』 「<特製泣く子も黙る沈黙大好きっ茶>を、彼に飲ませてやるからね」 それは何? と斎のみならず、その場にいた全員が思った。
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