きつねこぶたの創作部屋

きつねこぶたの創作小説ブログです。ただいま<私立クリスティ 学園シリーズ>を連載しています。
[ <23>−1 ]
2008/01/30(Wed) 08:38:31
 次の日、何故か雅人は学校を休んだ。
「どうした、雅人は」
 生徒会室に彼がいないことに、帝は驚く。
「さあ」
 直樹はPCを打ちながら、生返事をした。
「斎はともかく英司の奴も来てないとは、どういうことだ」
「寝坊でもしたのかな」
 にやりと眼鏡を直しつつ、笑む直樹を、帝はぎろりとにらんだ。
「俺の目が、ごまかせると思ってるのか。お前、雅人に何をした!」
「ちょっとした実験だよ」
 動じずに直樹は答える。
「ちょっとした実験? 家に帰れなくなるぐらいの状態に、またしたってのかっ」
「家には十分帰れるはずなんだけどね。ま、彼のプライドが、あんな姿を家の連中に晒したくなかったってとこだろうな」
 あくまで冷静な言葉に、帝は怒る気力もうせて、椅子に座り込む。
「で? 何をしたんだ。あいつは今度、何になってしまったんだ」



第一巻<23> / TB(-) / CM(-) /

[ <23>−2 ]
2008/01/31(Thu) 11:31:45
「まだ、戻ってないの?」
『うん、そうなんだ』
「どうしましょうね、雅人先輩」
「げこげこげこっ」
 昼休みの屋上で、3人と一匹の緊急会議がもたれていた。
 コンクリの床にミニ座布団を置き、雅人がえるはちょこんと座っている。
 それを囲んで、英司と斎、おまけに茉理が困った顔をして座っていた。
『直樹のど変態! こんなわけわからんもん、作りやがって! げこげこげこっ』
「直樹先輩にメールを打ったら、これってちかんやストーカーのことも配慮して作った名品だそうですよ」
 渋い顔をしながら、英司はかえるに報告した。
「ほら、この姿になれば、どこからでも忍び込めるし、見放題だ、と言ってましたが」
「はた迷惑な商品よね」
 考えた直樹の頭の構造が、よくわからないな、と茉理はため息をついた。
 雅人に放射されてしまった『対ちかんストーカー対策用スプレー』。
 ちかん及びストーカーに向けて発射すれば、たちまち相手をかえるに変化させてしまう。
 効力は一時間のみなのだが、おまけの効能がついていた。

『悲鳴をあげさせるってことは、そういう行為を行おうとしてるってことだろ?』(by直樹)

 わけのわからん理屈の元、一時間で人間には戻るのだが、その後誰かと接触した際、悲鳴をあげられてしまったら、またかえるに変化してしまうという、そら恐ろしい連鎖反応があった。
 おかげで雅人は人間に戻れずにいる。



第一巻<23> / TB(-) / CM(-) /

[ <23>−3 ]
2008/02/01(Fri) 10:20:34
 斎の家で、人間に戻れたのはいいのだが(そのままちゃっかり泊り込み、斎と同じ部屋で寝るという特権まで行使した)、登校したら、さっそく彼のおっかけ女生徒たちに、『きゃーっ、雅人様よーっ』と黄色い声をあげられてしまい――。
 彼はまた、かえるに逆戻りしてしまったのだ。
 直樹の教室に抗議に行ったが、あっさり窓から跳ね飛ばされ、自分の教室の机の上でしょんぼりしていたら、クラスメイトにつつかれて、解剖されそうになる有様。
 しかたなく1年生のクラスに入り込み、斎のところで4時間目までかくまってもらったというわけだ。
 その間にも、一時間たってはトイレに駆け込み、人間に戻って教室に行こうとすれば、またまたすれ違う追っかけ女生徒たちの黄色い悲鳴に、かえるの姿に逆戻り。
『ああっ、なんということだ! これもこの僕の美しさがまねいた悲劇なのだ。きっと悪の魔術師 直樹は、僕の名声に嫉妬して、こんな姿に変えてしまったのだろう。これで僕は、生涯『かえるの王子様』として生きねばならない。チャーミングなレディたちの前で、無様にもかえるの姿に変身してしまう、哀れな生き物として――これ以上の悲劇があろうか!』


第一巻<23> / TB(-) / CM(-) /

[ <23>−4 ]
2008/02/02(Sat) 07:36:10
「……けっこう不気味かも」
「うん、陶酔してるかえるって、かなり見るに耐えない物だな」
『そうですね』
 3人は、かえるの姿になっても、一生懸命四足を駆使してポーズを取る雅人の根性に、開いた口がふさがらなかった。
「まあ、薔薇の花吹雪がないだけましか」
『そんなこと言ってると――あ、ほら、降ってきた』
 頭の上からちっさな花びらが、はらほらかえるの上に舞い落ちる。
「うーん、体がミニサイズになっちゃったから、魔力もほとんど無くなったのかな」
『そうですね、今の雅人先輩だったら』
「これで精一杯ってとこだよ、たぶん」
 最後のセリフに、3人は驚いて振り返る。
「やあ」
 思いっきり普通の顔で、直樹がそこに立っていた。




第一巻<23> / TB(-) / CM(-) /

[ <23>−5 ]
2008/02/03(Sun) 22:41:32
『諸悪の根源!』
『すごい表現するね、後野さん』
『うーん、でも確かにその言葉は、合ってるかも』
 三人はこの騒ぎの発端となった先輩を見て、とっさの感想を思念で会話した。
 口に出したら、どうなるかわからない。
 直樹はにやりと笑うと、3人の方に近づいてきた。
「お前たち、ここにいたのか。英司、斎、今すぐ生徒会室に行け。帝が心配してたぞ」
「あーっ、そうだった」
『雅人先輩のことで、生徒会室に行くのを忘れてましたね』
 二人は、あわてて茉理に手を振ると、屋上を出て行った。
「……」
 茉理の背に、冷や汗が流れる。
 別に直樹が怖いというわけではないのだが――。
(でもやっぱり関わりたくない人だわ、この先輩も)
 内心ため息をつきながら、彼女は今すぐ穏便に、この場を去る口実を探した。



第一巻<23> / TB(-) / CM(-) /



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