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2008/01/30(Wed) 08:38:31
次の日、何故か雅人は学校を休んだ。 「どうした、雅人は」 生徒会室に彼がいないことに、帝は驚く。 「さあ」 直樹はPCを打ちながら、生返事をした。 「斎はともかく英司の奴も来てないとは、どういうことだ」 「寝坊でもしたのかな」 にやりと眼鏡を直しつつ、笑む直樹を、帝はぎろりとにらんだ。 「俺の目が、ごまかせると思ってるのか。お前、雅人に何をした!」 「ちょっとした実験だよ」 動じずに直樹は答える。 「ちょっとした実験? 家に帰れなくなるぐらいの状態に、またしたってのかっ」 「家には十分帰れるはずなんだけどね。ま、彼のプライドが、あんな姿を家の連中に晒したくなかったってとこだろうな」 あくまで冷静な言葉に、帝は怒る気力もうせて、椅子に座り込む。 「で? 何をしたんだ。あいつは今度、何になってしまったんだ」
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2008/01/31(Thu) 11:31:45
「まだ、戻ってないの?」 『うん、そうなんだ』 「どうしましょうね、雅人先輩」 「げこげこげこっ」 昼休みの屋上で、3人と一匹の緊急会議がもたれていた。 コンクリの床にミニ座布団を置き、雅人がえるはちょこんと座っている。 それを囲んで、英司と斎、おまけに茉理が困った顔をして座っていた。 『直樹のど変態! こんなわけわからんもん、作りやがって! げこげこげこっ』 「直樹先輩にメールを打ったら、これってちかんやストーカーのことも配慮して作った名品だそうですよ」 渋い顔をしながら、英司はかえるに報告した。 「ほら、この姿になれば、どこからでも忍び込めるし、見放題だ、と言ってましたが」 「はた迷惑な商品よね」 考えた直樹の頭の構造が、よくわからないな、と茉理はため息をついた。 雅人に放射されてしまった『対ちかんストーカー対策用スプレー』。 ちかん及びストーカーに向けて発射すれば、たちまち相手をかえるに変化させてしまう。 効力は一時間のみなのだが、おまけの効能がついていた。
『悲鳴をあげさせるってことは、そういう行為を行おうとしてるってことだろ?』(by直樹)
わけのわからん理屈の元、一時間で人間には戻るのだが、その後誰かと接触した際、悲鳴をあげられてしまったら、またかえるに変化してしまうという、そら恐ろしい連鎖反応があった。 おかげで雅人は人間に戻れずにいる。
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2008/02/01(Fri) 10:20:34
斎の家で、人間に戻れたのはいいのだが(そのままちゃっかり泊り込み、斎と同じ部屋で寝るという特権まで行使した)、登校したら、さっそく彼のおっかけ女生徒たちに、『きゃーっ、雅人様よーっ』と黄色い声をあげられてしまい――。 彼はまた、かえるに逆戻りしてしまったのだ。 直樹の教室に抗議に行ったが、あっさり窓から跳ね飛ばされ、自分の教室の机の上でしょんぼりしていたら、クラスメイトにつつかれて、解剖されそうになる有様。 しかたなく1年生のクラスに入り込み、斎のところで4時間目までかくまってもらったというわけだ。 その間にも、一時間たってはトイレに駆け込み、人間に戻って教室に行こうとすれば、またまたすれ違う追っかけ女生徒たちの黄色い悲鳴に、かえるの姿に逆戻り。 『ああっ、なんということだ! これもこの僕の美しさがまねいた悲劇なのだ。きっと悪の魔術師 直樹は、僕の名声に嫉妬して、こんな姿に変えてしまったのだろう。これで僕は、生涯『かえるの王子様』として生きねばならない。チャーミングなレディたちの前で、無様にもかえるの姿に変身してしまう、哀れな生き物として――これ以上の悲劇があろうか!』
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2008/02/02(Sat) 07:36:10
「……けっこう不気味かも」 「うん、陶酔してるかえるって、かなり見るに耐えない物だな」 『そうですね』 3人は、かえるの姿になっても、一生懸命四足を駆使してポーズを取る雅人の根性に、開いた口がふさがらなかった。 「まあ、薔薇の花吹雪がないだけましか」 『そんなこと言ってると――あ、ほら、降ってきた』 頭の上からちっさな花びらが、はらほらかえるの上に舞い落ちる。 「うーん、体がミニサイズになっちゃったから、魔力もほとんど無くなったのかな」 『そうですね、今の雅人先輩だったら』 「これで精一杯ってとこだよ、たぶん」 最後のセリフに、3人は驚いて振り返る。 「やあ」 思いっきり普通の顔で、直樹がそこに立っていた。
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2008/02/03(Sun) 22:41:32
『諸悪の根源!』 『すごい表現するね、後野さん』 『うーん、でも確かにその言葉は、合ってるかも』 三人はこの騒ぎの発端となった先輩を見て、とっさの感想を思念で会話した。 口に出したら、どうなるかわからない。 直樹はにやりと笑うと、3人の方に近づいてきた。 「お前たち、ここにいたのか。英司、斎、今すぐ生徒会室に行け。帝が心配してたぞ」 「あーっ、そうだった」 『雅人先輩のことで、生徒会室に行くのを忘れてましたね』 二人は、あわてて茉理に手を振ると、屋上を出て行った。 「……」 茉理の背に、冷や汗が流れる。 別に直樹が怖いというわけではないのだが――。 (でもやっぱり関わりたくない人だわ、この先輩も) 内心ため息をつきながら、彼女は今すぐ穏便に、この場を去る口実を探した。
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