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2008/03/02(Sun) 16:14:07
数日が、何事もなく過ぎ去る。 (これ……どうしよっかな) 昼休み、茉理は絵本を片手に、屋上でぼーっとしていた。 あれから生徒会メンバーとは会っていない。 (雅人先輩、どうしたかな。ちゃんと元の体に戻れたかなあ) 校内でかえるの姿をみかけたという話はないから、大丈夫になったんだろうが。 『後野さん、今、どこ?』 ふいに思念が送られてきても、茉理は驚かなかった。 『今は屋上。一人でぼーっとしてるよ』 『そっか』 『遠野君は?』 『僕? 僕は生徒会室。帝先輩のかわりに、ご意見箱の中身を整理中』 ふうん、と茉理はつぶやき、一人空を仰いだ。 「御機嫌よう、レディ」 「わっ!」 突然目の前に薔薇の花を差し出され、彼女は思いっきりのけぞる。 『どうしたの?』 『あ……雅人先輩が、目の前に』 『そっか。じゃ、僕は一旦これで』 思念は消え、茉理はあわてて居住まいを正した。
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2008/03/03(Mon) 22:39:12
微笑んで、いつもよりぎこちないポーズをする雅人に、彼女は首をかしげた。 (なんか違うな――ポーズが決まってないっていうか) トレードマークの薔薇は、右手に持っているだけで、いつものように香りを楽しんだり、口元に持ってきて、さりげなく格好つけたりしない。 茉理の不思議そうな目線に気づき、雅人は苦笑した。 「やあっぱばれてるな。俺って修行が足りないよね」 けっこう通用するんだけどね、とつぶやきながら、雅人はぼりぼり頭をかく。 茉理は、いよいよ目が点になった。 (雅人先輩、どうしたわけ? 突然イメージ崩れちゃってる) 思いっきり見つめられ、雅人はにやっと笑って、指を一回はじく。 「う……うわわわーっ!」 「あっ、驚いた? ごめん、君って初めてだったんだ」 雅人の姿が一瞬歪み、揺らいだあとにまたはっきりした。 でもそこにいたのは――。
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2008/03/04(Tue) 09:36:16
「や、や、や、山下先輩っ!」 「正解。俺だよ」 にこっと英司は、微笑みかける。 「今のね、変身魔法。でも俺、あんまり得意じゃないんだな」 「……」 「ちなみに雅人先輩は、変化の魔術の超天才なんだ。俺なんてまだまだ――よくしごかれてるけどね」 「はあ……」 最初の驚きが消えると、茉理は胸に手を当てた。 (この学校って本当に――わたし、卒業まで心臓が持つかしら) 心なしかため息まで出る。 「大丈夫? 顔、青いけど」 「そりゃあ、誰だって驚きますよ。突然人が、別な人間に変身しちゃったら」 「まあ、そうか。俺たち、けっこうよくやるから、慣れちゃってんだなあ」 さらっと言われ、茉理はますます肩が重くなった。 (普通の神経じゃ、ついてけないわ)
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2008/03/05(Wed) 09:45:53
「でもどうして山下先輩が、雅人先輩に化けてるんですか」 「ああ、会長命令でね。授業以外でどうしても雅人先輩じゃなきゃいけないこと――委員会とか、体育系クラブの助っ人とかは、しばらく俺が変身して代理で出ることにしたんだ」 「雅人先輩は、どうかしたんですか」 「本人はいたって元気だよ。でも例のスプレー効果は、まだ顕在でね。おかげで廊下をまともに歩くわけにはいかなくなったんだ」 「それで山下先輩が、身代わりですか」 「うん、事が収まるまで、雅人先輩は休み時間とか教室を出るときは、俺とか帝とか、別な生徒に変化してるんだ。そうしたら見つけられても、まず悲鳴をあげられないだろ?」 「まあ、確かに」 「俺は目の前で悲鳴があがっても、別にかえるにならないから問題ないし。ま、しばらくの間の応急処置ってことかな」 ふう、と息を吐くと、英司は肩をまわす。
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2008/03/06(Thu) 09:22:29
「あー、でも他人に成りすますって、とっても疲れるなあ。ずっと神経張りっぱなしだし」 「それはまだまだ修行が足りない証拠だよ、え・い・じ・君」 突然耳元でささやかれ、英司は腰が抜けて座り込んでしまう。 「ま、雅人先輩っ。おとなしく生徒会室に篭ってる予定じゃなかったんですか」 「いやだなあ、英司君。僕は君が僕の姿で何かトラブルに巻き込まれてないか、心配で見に来たんじゃないか。後輩を想う、この気持ち、君なら受け止めてくれるだろ? ん?」 (この人も、進出気没だわ) 突然英司の背後に現れた雅人を見て、茉理はこめかみを押さえた。 もう何も言う気になれない。 思いっきり脱力した茉理は、まだ立てずにいる英司に手を差し出した。 英司は、彼女の手につかまって、立ち上がる。 「ありがとう。それにしても先輩、どうしてここに?」 「僕の可愛い英司君が、浮気してないか心配でね」 茉理は耳を疑った。 (えーと、この二人ってどういう関係なの?)
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