きつねこぶたの創作部屋

きつねこぶたの創作小説ブログです。ただいま<私立クリスティ 学園シリーズ>を連載しています。
[ <25>−1 ]
2008/03/02(Sun) 16:14:07
 数日が、何事もなく過ぎ去る。
(これ……どうしよっかな)
 昼休み、茉理は絵本を片手に、屋上でぼーっとしていた。
 あれから生徒会メンバーとは会っていない。
(雅人先輩、どうしたかな。ちゃんと元の体に戻れたかなあ)
 校内でかえるの姿をみかけたという話はないから、大丈夫になったんだろうが。
『後野さん、今、どこ?』
 ふいに思念が送られてきても、茉理は驚かなかった。
『今は屋上。一人でぼーっとしてるよ』
『そっか』
『遠野君は?』
『僕? 僕は生徒会室。帝先輩のかわりに、ご意見箱の中身を整理中』
 ふうん、と茉理はつぶやき、一人空を仰いだ。
「御機嫌よう、レディ」
「わっ!」
 突然目の前に薔薇の花を差し出され、彼女は思いっきりのけぞる。
『どうしたの?』
『あ……雅人先輩が、目の前に』
『そっか。じゃ、僕は一旦これで』
 思念は消え、茉理はあわてて居住まいを正した。





第一巻<25> / TB(-) / CM(-) /

[ <25>−2 ]
2008/03/03(Mon) 22:39:12
 微笑んで、いつもよりぎこちないポーズをする雅人に、彼女は首をかしげた。
(なんか違うな――ポーズが決まってないっていうか)
 トレードマークの薔薇は、右手に持っているだけで、いつものように香りを楽しんだり、口元に持ってきて、さりげなく格好つけたりしない。
 茉理の不思議そうな目線に気づき、雅人は苦笑した。
「やあっぱばれてるな。俺って修行が足りないよね」
 けっこう通用するんだけどね、とつぶやきながら、雅人はぼりぼり頭をかく。
 茉理は、いよいよ目が点になった。
(雅人先輩、どうしたわけ? 突然イメージ崩れちゃってる)
 思いっきり見つめられ、雅人はにやっと笑って、指を一回はじく。
「う……うわわわーっ!」
「あっ、驚いた? ごめん、君って初めてだったんだ」
 雅人の姿が一瞬歪み、揺らいだあとにまたはっきりした。
 でもそこにいたのは――。




第一巻<25> / TB(-) / CM(-) /

[ <25>−3 ]
2008/03/04(Tue) 09:36:16
「や、や、や、山下先輩っ!」
「正解。俺だよ」
 にこっと英司は、微笑みかける。
「今のね、変身魔法。でも俺、あんまり得意じゃないんだな」
「……」
「ちなみに雅人先輩は、変化の魔術の超天才なんだ。俺なんてまだまだ――よくしごかれてるけどね」
「はあ……」
 最初の驚きが消えると、茉理は胸に手を当てた。
(この学校って本当に――わたし、卒業まで心臓が持つかしら)
 心なしかため息まで出る。
「大丈夫? 顔、青いけど」
「そりゃあ、誰だって驚きますよ。突然人が、別な人間に変身しちゃったら」
「まあ、そうか。俺たち、けっこうよくやるから、慣れちゃってんだなあ」
 さらっと言われ、茉理はますます肩が重くなった。
(普通の神経じゃ、ついてけないわ)



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[ <25>−4 ]
2008/03/05(Wed) 09:45:53
「でもどうして山下先輩が、雅人先輩に化けてるんですか」
「ああ、会長命令でね。授業以外でどうしても雅人先輩じゃなきゃいけないこと――委員会とか、体育系クラブの助っ人とかは、しばらく俺が変身して代理で出ることにしたんだ」
「雅人先輩は、どうかしたんですか」
「本人はいたって元気だよ。でも例のスプレー効果は、まだ顕在でね。おかげで廊下をまともに歩くわけにはいかなくなったんだ」
「それで山下先輩が、身代わりですか」
「うん、事が収まるまで、雅人先輩は休み時間とか教室を出るときは、俺とか帝とか、別な生徒に変化してるんだ。そうしたら見つけられても、まず悲鳴をあげられないだろ?」
「まあ、確かに」
「俺は目の前で悲鳴があがっても、別にかえるにならないから問題ないし。ま、しばらくの間の応急処置ってことかな」
 ふう、と息を吐くと、英司は肩をまわす。


第一巻<25> / TB(-) / CM(-) /

[ <25>−5 ]
2008/03/06(Thu) 09:22:29
「あー、でも他人に成りすますって、とっても疲れるなあ。ずっと神経張りっぱなしだし」
「それはまだまだ修行が足りない証拠だよ、え・い・じ・君」
 突然耳元でささやかれ、英司は腰が抜けて座り込んでしまう。
「ま、雅人先輩っ。おとなしく生徒会室に篭ってる予定じゃなかったんですか」
「いやだなあ、英司君。僕は君が僕の姿で何かトラブルに巻き込まれてないか、心配で見に来たんじゃないか。後輩を想う、この気持ち、君なら受け止めてくれるだろ? ん?」
(この人も、進出気没だわ)
 突然英司の背後に現れた雅人を見て、茉理はこめかみを押さえた。
 もう何も言う気になれない。
 思いっきり脱力した茉理は、まだ立てずにいる英司に手を差し出した。
 英司は、彼女の手につかまって、立ち上がる。
「ありがとう。それにしても先輩、どうしてここに?」
「僕の可愛い英司君が、浮気してないか心配でね」
 茉理は耳を疑った。
(えーと、この二人ってどういう関係なの?)





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