|
|
|
2008/04/05(Sat) 10:13:05
雅人との庭園騒ぎから、2日たった。 彼とあの時会っていたのが、もう一人の彼女候補――早川 響子であると、茉理は知った。 情報源は、奈々だ。 『ねえねえ、ついに3人目の候補者がエントリーされたんだって』 『そう』 『もう! なにそんな気のない声、出してんのよ。ま、そうよね、茉理に勝ち目はないものね。ほんと、帝様も生徒会の皆様も、何を考えてるのかしら』 『……』 『3人目は、早川 響子。1年E組。ほら、斎様と同じクラスよ』 『ふーん』 『彼女は初等部から有名な人なのよ。名門グランスノア家とレティア家の血を引く、もう魔術の大天才! おまけに美人で清楚で、お姫様みたいな感じだし――残念だけど、茉理には、ちょっとレベルが高すぎね』 (別にそんなのどうでもいいけど) 茉理は、ひじをつきながら、ため息をついた。 そんな彼女をどう思ったのか、奈々はがしっと机に乗り出してくる。 『でも茉理! わたしたちは親友よ。あなたが例え帝様の彼女に選ばれなくても――っていうか、結果はみえてるけど、最後までがんばって。わたし、応援してるからね』 応援なんてしなくていいんだけど、と心の中で茉理は思い、はああっとまたため息を漏らした。
第一巻<27> / TB(-) / CM(-) / ↑
|
|
|
|
|
2008/04/06(Sun) 10:13:12
5月31日に、イベントは開始されるらしい。 一体それがなんなのか、茉理は興味もないので、ほうっておいた。 実際、その日に参加する気はゼロ。 それどころか学校に来る気すらない。 (わたしってお兄ちゃんがいるから、この学校に留まってるだけなんだもん。そんな生徒会長の彼女になんて、死んだってごめんだわ) そう堅く決意してはいるのだが――。 茉理は、そっと鞄に触れた。 あの本が入っている。 あれを読んだ時以来、茉理は夢を見るようになった。 夢の中身は、決まってお話の一部。 素敵な騎士の誓いを受けているシーンだったり、はたまた悲惨な光景だったりした。 (でも、なんだって騎士役が、生徒会長に似てるわけ?) 昨夜の夢では、黒いローブを纏った少女に跪いているのは、どことなく帝にそっくりな青年だった。 (ま、わたしの潜在意識が作り出したものなわけだから、わたしの意識の中にいる人が、夢に出てきててもおかしくないんだけどね) 深い意味はないんだろうが――不快であることは確かだった。 (せっかく乙女の妄想を掻きたてるような素敵な場面に、どうしてあの人が割り込んでくるわけ!?) ただでさえ学校で顔をあわせるのも嫌だというのに、夢にまで出てこられたらたまらない。 そんなこんなで、彼女は今、憂鬱だった。 (今晩も、あの夢を見るのかしら) そう思うと、もうため息しか出ない。 (あーあ、生徒会長の大ばか者。今夜も出てきてごらんなさい。図書室にあった、【世界に伝わる呪い大全集】借りてきて、出来そうなので呪いを送ってやるわ) 物騒なことを考えながら、茉理はこぶしを握り締めた。
第一巻<27> / TB(-) / CM(-) / ↑
|
|
|
|
|
2008/04/07(Mon) 08:34:58
「――以上でおおまかなプランはたったな」 直樹の冷静な声が、放課後の生徒会室に響いた。 例の円卓に集うのは、いつもの面々――いや。 中央の椅子は、空席だった。 「僕は賛成」 「俺もいいっすよ」 二人の賛同を受け、直樹は斎に聞く。 「お前も、この案には賛成してくれるだろ? 参加できるかはともかくとして」 斎は白い表情のまま、うなずいた。 「お前は万が一のことがある。魔力を使うことは極力さけて、後方で待機しててくれ。そのかわり」 黒眼鏡がきらっと光る。 「今年は、帝本人にワンステージをまかせようと思う。本人も了解済みだ」 「帝が?」 英司は、やや意外そうな声をあげた。 「去年は俺たちの組んだ障害コースをクリアする候補者たちを見ているだけだったが、最終決断を彼にまかせた方が理にかなっている。これは帝自身が言い出したことでね」 「去年は、全部高みの見物決め込んでいた王様が動くなんて、ますます今年は期待できそうだね」 面白そうに言う雅人に、直樹は顔をしかめる。 「その分、俺たちも気合を入れていかないとな。各自、自分の持ち場で全力をつくしてくれ」 「わかりました」 英司はうなずき、立ち上がった。
第一巻<27> / TB(-) / CM(-) / ↑
|
|
|
|
|
2008/04/08(Tue) 16:05:40
「おや、英司君、どこ行くの?」 のほほんと聞く雅人に、英司はこぶしを握って突き出す。 「どこ行く、ですって! 先輩のかわりに、3年A組 白川 恵子先輩のお誘いを、断りにいくんじゃないですかっ。まったくもう」 「あー、そうだったっけ」 「少しは後輩を労わってくださいよ、雅人先輩。体育館の裏で、放課後待ってるよ、なんて返事をするから、俺が苦労するんじゃないですか。自分の体が非常時なの、ほんとにわかってます?」 「そう怒るなよ、英司君。君はほんとに可愛いね」 雅人はにこやかに笑むと、立ち上がり、彼の背後にまわった。 すっと英司が動きを変える。 「いつもいつも! もう後ろは取らせませんよ」 「おおっ、さすが英司君。少しは成長したみたいだね。お兄ちゃんは嬉しいよ」 さらりとかわす雅人を、睨み殺しそうな視線で見つめながら、英司は低い声でつぶやいた。 「人の気も知らないで――いいですか。これ以上面倒な事を引き受けないでください。イベントまでに、俺だって体調と魔力は整えておかないといけないんです。余計な魔力の浪費は、俺もごめんです。わかりましたね」
第一巻<27> / TB(-) / CM(-) / ↑
|
|
|
|
|
2008/04/09(Wed) 11:17:39
「わかったよ、ごめん」 あっさりあやまられ、英司ははああっとため息をついた。 「俺、本気で言ってるんですけど」 「僕も本気だよ」 「そうは見えないんですけどね」 「心外だなあ。英司君、僕ってそんなに信用出来ない?」 「はい」 きっぱりと肯定され、今度は雅人が無言になった。 「二人ともそのくらいにしておけ」 直樹が、割って入る。 「英司、さっさと片付けてこい。こいつには、俺からよく言ってきかせるから」 まだ言い足りなさそうな英司だったが、もう一人の信頼出来そうな先輩には逆らえず、踵を返して、生徒会室を出て行った。 「サンキュー、心の友、直樹君」 「別にお前をけりつきそうもない言い争いから、救ったわけではないからな」 直樹は冷たい口調で言った。 「ただ、今回は俺にも一応責任があるからな」 「おっ、めずらしく自覚してるじゃない?」 ふふっと薔薇を弄びながら、雅人は笑う。 「お前も、さっさと体をなんとかしろ」 「なんとかと言われてもねえ」 ふうっと憂鬱そうに、雅人は息を吐いた。
第一巻<27> / TB(-) / CM(-) / ↑
|
|
|