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2008/04/17(Thu) 11:00:58
「なんだ、これは!」 大きく『号外』と見出しをつけられた校内新聞を、ビリリッと帝は引き裂いた。 「み……帝、落ち着いてくれよ」 本気で困った顔の雅人が、彼をなだめに入る。 さすがの彼も、今日は憂鬱そうだ。 「何が悲しくて、クリスティ筆頭のお前と英司が、くだらん週刊誌のスキャンダル扱い記事を書かれねばならんのだ。お前の日ごろの行いが悪いから、こういうことになるんだぞ」 「今回は僕も、ほんとに反省してるよ、参ったね、こうなるなんて」 ふうっと息消沈しつつ、雅人は円卓に突っ伏した。 いつもの甘いセリフや悲劇に酔いしれた言葉は、まったくない。 「まあ、出たものはしょうがないだろう。帝、少しは冷静になれ」 直樹の言葉が、沈静剤のように、帝の心を静めていく。 不機嫌そうに彼は新聞を足で踏みにじると、どかっと椅子に腰掛けた。 斎はため息をつき、手に持つ新聞を改めて見る。 『禁断の恋! 麗しき魔族の貴公子二人が許されざる関係に!』 見出しには、でかでかと飾り文字と真っ赤な色で、そう書かれていた。 「二人は共に幼馴染。一体いつ友情が恋愛感情に変わったのかはわからないが、校内で二人が想いを交し合っているのを発見した目撃者も多数――おいおい、この写真なんて、去年の体育祭で、英司がリレーのアンカーで1位になって、お前が喜びで抱きついてるのじゃないか」 横から直樹が、新聞記事を読み上げ、あきれて声をあげる。 「それは素直に、喜びを表現しただけだっ」 「一度色眼鏡をかけてみられたら、なんでもそうなるだろうよ。これにこりて少しは慎め」 「直樹君、君の心には同情の文字はないのかい?」 「悪いが俺は忠告したはずだぞ、この前。それを無視して、このざまだ。同情の余地がどこにある」 「きっついなあ、事実だから何も言えないけど」 しゅんと沈み込んでしまった彼を、やれやれと直樹は見た。
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2008/04/18(Fri) 10:19:08
「英司はどうしてる?」 低い声で、帝が聞いた。 「あまりのショックで、家に篭ってるよ。ま、良い判断だ」 直樹はにやりと笑った。 「今日、学校になんて出てきてみろ。どんな目で見られるか、わかったもんじゃないからな。あいつは雅人と違って、そういうスキャンダラスなことの対処に弱いから、きっとどうにも出来なくて、おたおたしたあげく、空に逃避行するのでせいいっぱいだろう」 「ああっ、なんてことだ! 僕はもう永久に、彼に口を聞いてもらえそうもないよ。昨日、怒りに怒って体育館裏から戻ってきて、僕の胸倉をつかんで、本気でなぐってきたんだ。いやあ、彼があんなに怒ったら怖い奴だったなんて、思いもしなかったな」 「刺されなかっただけ、ましと思え。一応事情は聞いたけど――ほとんど雅人、お前の軽率な行動が巻いた種だった。参考までに聞きたいが、お前は後野 茉理に何を言ったんだ? あんなに誤解されるほど、すごいことをしたのか」 「いや……ただ単に、彼女が超生真面目で、融通が利かない思考の持ち主だっただけで、別に……ああああっ、そんなこと、今更気付いてどうする!」 はあああっ。 雅人は、直樹の言葉を受け、とどめを刺された男のように、円卓にどさっとうつ伏せになった。
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2008/04/19(Sat) 12:12:48
顔をあげもしない雅人を、斎は胸痛く見つめる。 そこにいるのは、普段の麗しく誇り高い雅人ではなくて、完全な抜け殻だ。 横で見ているこっちが、みじめに思えてくる。 斎はしばらく逡巡したが、やがてその辺に置いてあったプリントをひっくり返して、鉛筆で書いた。 [今日、僕が英司先輩の所に行ってみます] プリントを差し出され、雅人は読むと、顔を輝かせた。 「斎〜、嬉しいよ〜、ああっ、こんな身近に僕の味方がいるなんて。天はまだ僕を見放していないというわけだね」 斎は微笑むと、更に書き足す。 [後野さんにも、僕が説明してみます。先輩と英司先輩のことは、誤解だって] 「本当かい? サンキュー、斎君」 ハートマークを散らす勢いで、雅人は斎に飛びかかり、抱きついた。 直樹が、顔をしかめる。 「おいおい、自粛しろと言ったはずだぞ、雅人。言ってるそばからこれだ」 「なんだよ、喜びをスキンシップで表現して何が悪い」 かしっと斎を抱きしめながら、雅人は反論した。 「そして今度は新聞に、【愛のもつれのさんかく関係! 雅人様の本命は誰?】とか書かれるわけか。まったく付き合いきれないな」 直樹の言葉に、雅人は名残惜しげに斎を離す。
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2008/04/20(Sun) 09:38:02
「雅人、お前はしばらく教室と生徒会室以外は、立ち入り禁止だ。その辺をうろうろして、揉め事を増やすな」 「えーっ、トイレはどうすんのさ、帝」 口を尖らせ、叫ぶ雅人を、帝はぎろりと睨んだ。 「今まで以上に、休み時間の他人との行動は慎め。必ず別な生徒の姿で行くこと」 「わかったよ」 雅人は、にっこりうなずいた。 「まだ昼休みは終わってないから、これから俺が昼の特別放送を流し、二人は白だと釈明しておく。もう二度とこんな馬鹿なうわさを流されるようなことはするな!」 そう言うと、帝は席を立った。 斎の前で立ち止まると、ふっと表情を緩める。 「あいつを――英司を頼むぞ」 斎は静かに微笑んで、うなずいた。
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2008/04/21(Mon) 09:34:19
すべての生徒会業務を終え、斎は学校を出た。 その足で、山下家を訪ねる。 英司の家は、新興住宅地に建つ、こじんまりとした民家。 5人の中では一番規模が小さく、まさしく庶民的な一軒家だった。 インターフォンを押そうとして、斎は一瞬ためらった。 誰かの声がかかっても、自分は返事が出来ない。 カメラのたぐいも見あたらず、玄関に立つ斎を、中からチェックしてくれそうなものもない。 困ってぼーっとしていると、背後から声がかかった。 「あら、うちに何か御用?」 振り向くと、小柄な女性がにこにこしている。 「その制服――あなた、クリスティの生徒ね」 目を細めて微笑むと、女性は、いらっしゃい、と彼を中に入れてくれた。
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