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2008/05/30(Fri) 19:07:33
「ふう、やっと終わったあ」 英司は、外に出て、うーんっと伸びをした。 「予定より遅くなってしまったな」 「直樹先輩、遅すぎですよ、もう8時じゃないですか」 「ま、イベントの打ち合わせだからしょうがないよ。やっぱり多少命の危険があるもの。念入りに話しとかないとねえ、英司君」 さらりと英司に声をかけた雅人だが、おもいっきりそっぽを向かれ、しゅんとしてしまう。 黒々した校舎を見上げ、英司は、妖怪でもいそうですね、とつぶやいた。 「またまた〜、そんな可愛いこと、言ってくれちゃって、英司君」 「……直樹先輩、今度夏休みの生徒会好例夕涼み大会は、きもだめしにしませんか。夜の校内借りて」 「そうだな。検討してみる余地はある。ところで雅人、いい加減、涙ぐましい努力はやめろ。いくら振っても、英司が今すぐに反応すると思うのか」 最後の言葉は、何気に横にいた雅人につぶやく。 「だあって、つまらないんだもん。英司君と遊べなくてさ」 ぎろっ。 小さな声で答えたつもりが、しっかり聞かれていたらしい。 英司の一睨みにあい、雅人は首をすくめた。
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2008/05/31(Sat) 10:19:48
「くだらんこと、言ってないで、早く帰るぞ」 前方を歩いていた帝が、振り向き、怒鳴る。 いらいらしているのが、傍目から見たら、まるわかりだ。 3人は、こっそりめくばせする。 『やっぱ、いらだってますよ、帝』 『そうだな。この時間まで、斎から何の連絡もなかったしな』 『ていうか、普通連絡する? そんなの。だってデートじゃない』 いちいち交際相手のことまで報告してたら、斎だってプライバシーの侵害でしょうが、とつぶやいた雅人の後頭部を、直樹は持っていた鞄でばしっとなぐった。 「お前には、やはりもっと、きついおしおきを考えた方が良さそうだな」 「うわっ、また変なのはやめてくれっ! かえるスプレーで、もう十分だよ」 雅人があわてて直樹から飛びのく。 「英司君、助けてくれーっ」 とまたおおげさに、後輩の背に隠れようとしたが、さらりとかわされてしまい、雅人はしゅんとした。 胸元から取り出した薔薇の花も、見事にしおれている。 それを手に、雅人は地面に膝をつき、お得意の悲劇のポーズを取った。 「ああ、どうしたらいいんだ。どうすれば、可愛い英司君の心を、また僕の方に振り向かせられるというんだ。僕は、僕はもう絶望で、動くことも出来ないよ」
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2008/06/01(Sun) 16:10:51
「じゃ、動かないで、じっとしててくださいよ! まったくもう」 ついに英司が、あまりにも声をかけてくれー、と朝から努力し続ける雅人の行動に、あきれて口を利いてしまう。 次の瞬間。 がばっと雅人は、満面の笑みを浮かべて、英司に飛びついた。 「うわっ、ちょっと、離してください」 「嫌だね、もう何があっても、君を絶対に離さないよ」 「だーかーらー、そういうのが嫌なんですってば。大体、その言動と態度で誤解されるんでしょ」 ふくれる英司に、はいはい、と笑って、雅人は彼を離す。 「もう! ほんとーに反省したんでしょうね」 「したってば。でも時々ならいいだろう? 英司君とスキンシップしても」 「嫌です」 「えーっ、どうして」 「どうしてもしたいってんなら、年功序列で直樹先輩からどうぞ」 「こいつ? ああ、駄目駄目。直樹は、全然反応なし。昔っから僕とちっとも遊んでくれないんだ」 つまらなそうに言う雅人に、直樹の黒メガネが光った。 「そうかな。いつも俺が遊んでやってたろう。お前のその体で」 「……」 雅人の額から、たらたらと脂汗のようなものが流れだす。 (うわーっ、蛇ににらまれた蛙だなあ。きっと過去にも散々、直樹先輩の発明品で、ひどい目にあってたんだ) これだけは雅人に同情する気持ちになり、英司はため息をついた。
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2008/06/02(Mon) 16:01:25
空を見上げると、星がちらちらと瞬いている。 (明日も天気だなあ) などと、のんきに考えていたとき。 『――えい、じせん、ぱ、い』 「!」 突然、頭に響いてきた声に、英司の足が止まった。 「ん? どしたの? 英司君」 真っ先に雅人が、彼の様子がおかしいのに気付く。 『――英司先輩! どこですか』 「斎!」 英司の叫びに、すばやく雅人と直樹、それに帝が側に寄ってきた。 「お前こそ、今、どこだ? どうした、何かあったのか?」 『先輩は、今、どこに……』 「まだ学校だよ。校門前の道のとこ」 斎の声が変なのに気付き、英司は顔を曇らせる。 シュッと空間が歪み、英司の前に何かが出現した。 「斎!」 英司は、現れた体を受け止める。 座って、自分に顔をもたせかけると、ぐったりした生気のない瞳が、弱弱しく開いた。 『英司先輩……よかった、会えて』
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2008/06/03(Tue) 18:47:00
「おいっ、しっかりしろ! 何があった」 『力を、使い、すぎました……もう、体を少ししか維持できない……』 斎は、薄く笑みを浮かべ、心配そうに自分を囲む先輩たちを見た。 その目が、険しい顔をして、自分を見下ろす帝に止まる。 『……帝先輩、すみません、僕……』 「斎、何があったのか、説明してみろ!」 英司が、彼の体をゆさぶる。 『英司先輩、僕、我慢出来なくて、つい……ごめんなさい』 閉じた瞼から、きらりと雫が光る。 『このまま消えちゃったら、先輩たちに迷惑がかかります。どうしても、事情を説明したくて……でも……』 「斎、俺の声が聞こえるな」 直樹が、静かに斎の耳にささやく。 こくんとうなずく斎に、直樹は言った。 「お前に何があったのか、説明しに来たんだろ? でももう言葉を英司に送る力も残ってないようだな」 『そう、です……もう……』 「言葉を送るな。魔力をあと少しだけ集中し、体の維持に専念しろ。あと3分ぐらいは、我慢できるな」 『はい』 「俺が、お前の記憶を探る。そうすれば何があったのか、お前のことが、すべてわかる。それでいいな」
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