きつねこぶたの創作部屋

きつねこぶたの創作小説ブログです。ただいま<私立クリスティ 学園シリーズ>を連載しています。
[ <33>−1 ]
2008/06/24(Tue) 13:17:01
 まるで何事もなかったのように、一夜が明けた。
 朝食の席で、3人が考えたことは、まず雅人のことだった。
(うまくやってるかな、雅人先輩)
 英司は、トーストをほおばりながら、気になってしょうがない。
(ご家族のみなさんに、ばれてないといいけれど――)
 直樹は黙々と食事を済ませ、調べ物があるから先に行くぞ、と席を立つ。
 帝も無言で食事を済ませた。
(まったくどうしてあんな女を、助けてやらなきゃいけないのだ!)
 このまま異次元に飛ばしておきたいところだが、そうなると雅人が戻ってこれなくなる。
 彼は彼で、なんだが苛立っていた。
 昨日は夢心地に気分が良かったような思いもするのだが、今の彼の中にうずまくのは、なんだがよくわからないあせりと苛立つ心のみ。
(ええいっ、どうして俺が、こんなに心を騒がせなくちゃならない。冷静になれ。俺は魔族の総帥クリスティの本家跡取りなんだぞ)
 こんなことでどうする、と自分を叱咤しながら、彼は学校へと続く道を歩いていった。






第一巻<33> / TB(-) / CM(-) /

[ <33>−2 ]
2008/06/25(Wed) 15:29:55
 心配することもなく、雅人は順調に午前中を済ませた。
「はあい、みんな、元気?」
 あいかわらずの女言葉で、彼はにこにこ生徒会室にやってくる。
「あ、後野さん――じゃなかった、雅人先輩」
 大丈夫でしたか? と心配そうに聞いてくる英司を、彼はぎゅっと抱きしめた。
「可愛い英司先輩に、こんなに思われるなんて、わたし、とっても幸せです」
「ちょっ、後野さん――じゃなくて、雅人先輩、やめてください」
 外見が女の子だからか、心持ち顔を赤らめて、英司は彼の腕を振り解こうとする。
 いつもよりソフトなしぐさに、ふふっ、効果ばっちりだねえ、と雅人は笑い、自分の変身技術の高さに改めて満足した。
「それより帝は?」
「書庫で調べ物だ。異次元通路を開く手段を、いくつか見繕っているんだろう」
 直樹の言葉に、雅人扮する茉理は、薔薇の花を取り出す。
 香りを堪能するしぐさに、英司は横でうーんとうなった。
(どうでもいいけど、薔薇の花があんまり似合わない子だよなあ)
 いつもの彼女がそんなことをするはずないから、余計違和感があるのかもしれないが、どうも後野 茉理と薔薇の花は、いまいちイメージがはずれていた。




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[ <33>−3 ]
2008/06/26(Thu) 14:42:57
 雅人は気にすることなく、薔薇を弄びながらつぶやく。
「そうそう、英司先輩、悪いんですけど、今日の午後、委員会に出てもらえませんか。本当のわたしの姿で」
「うっ」
「しょうがないでしょ。これは特別。帝の許可ももらってあるし――委員長が出なかったら、話し合いにならないもの」
 ウインクして、『よ・ろ・し・く』と微笑まれ、英司はため息をついた。
「でね、そのための書類が職員室のコピー機の横にあるんですけど、委員の数だけコピー、よろしくお願いしまーす」
「って、この昼休みにやれってことですかあっ」
「あら、もうお弁当、食べ終わったじゃない」
 あくまで女の子らしく、少しいじわるな笑みを浮かべて、雅人はさらりと言い流す。
「お願いしますね、英司先輩」
 やれやれ、と肩を落とし、英司は生徒会室を出て行った。
(もし本当に後野さんが、帝の彼女になったとしたら――)
 さっきの雅人のしぐさは、後野 茉理本人そのものに見える。
(俺ってもしかして、雑用増えるんじゃないかなあ。後野さん、ああ見えてけっこう人使い荒そうだし)
 職員室に向かって歩きながら、いっそう肩が重くなる英司であった。





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[ <33>−4 ]
2008/06/27(Fri) 15:00:47
「英司をはずして、俺に何を言いたいんだ?」
 PCを打つ手を止めて、直樹は雅人扮する茉理をじろっと見た。
「ふふっ、よくわかってるねえ、直樹君」
 ふわっと笑むと、パチンと茉理は指を鳴らす。
「後野家は、なかなか面白いとこだったよ」
 元の金色派手な髪をさらりとかきあげ、雅人は優雅に微笑んだ。
「その姿の方が、話しやすいな。で、どうだった?」
「ご両親は、父親に少し魔力のかけらを感じたけど――ま、本人に自覚がないから、普通の人間だね。母親、及び祖母の方には、まったく魔力は感じなかった」
「そうか、やはりな」
 直樹は、メガネをきらりとさせる。
「父親は平凡なサラリーマン、母親はパートで近所のスーパー勤め。家には少しぼけの入ったおばあちゃんが、いつも留守番をしている。おばあちゃんは、以前は徘徊し、いなくなることいなくなることもあったけど、たいてい数日後には自力で戻ってくるし、あぶないことはしないみたいだから、監視をつける必要なし、とみなされている。確かに一応、つじつまの合わないことを言うし、ぼけているようにみえる」
「みえる?」
「――そういことだね。どうしてぼけ老人指定されてるのか、実は僕にはわからなかった。あんなにマトモに話すのに」
「……」
「家族が気がつかないなんて、よっぽどお互いのことに干渉しない家庭なんだろうか。あれはもう筋金入りのお芝居だよ。それもかなり年季が入った」




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[ <33>−5 ]
2008/06/28(Sat) 11:41:44
「なんで後野 茉理の祖母は、ぼけてる振りなんかしてるんだ?」
「さあね、僕の存在にも気付いたようだ。表向きはにこにこしてたが、けっこう夜とか探りを入れてきたしね。ひやひやだったよ」
 雅人は思い出したのか、うっと顔をしかめた。
「部屋に枕を持ってやってきて、一緒に寝よう、と言うんだ。参ったね、可愛い少女なら大感激だけど、とうのたったばあさんと添い寝だぜ」
「良かったな」
 女好きのお前には、さぞ嬉しかっただろう、と直樹が言うと、嫌味かそれは、と雅人は渋い顔をする。
「ともかくばあさんは、要注意だ。昨日は何もしてこなかったけど、今夜辺り危ないな」
「というか、そもそも魔力がないんだ。何も出来るわけないだろう」
 直樹の言葉に、雅人は憂いを秘めた顔になる。
「もっとやっかいな力があるでしょうが。どうするんだよ、僕の魔力が無効化されてしまったら」
「ま、おそらくそうはならんだろうさ。もし無効化されても変身が解けるぐらいで、命の危険はまずあるまい。ばあさんが、俺達の予想通りだとしたら、まずお前を害することは出来ない」
 直樹はそう言うと、にやりと笑った。
「そして俺達がクリスティ一族の血を受け継ぐ者だと知ったら、手を出すどころか歓迎されるかもな」




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